スピード感のある仕事とは、どのようなものなのか? その答えは、意外なキーワードに隠されていました。
これまで、ビジネスパーソンの仕事の進め方や時間の使い方などは、漠然としたニュアンスだけで語られてきましたが、ビジネスのDX化などが進んだことで、「仕事ができる人は、時間をどのように費やしているのか?」を追跡することが可能になっています。
そこで明らかになったのは、成果を出し続けている人は、一般社員と比べて「すぐに仕事を始める割合が1.8倍から2.3倍も高い」ということです。
仕事ができる人は動き出しの重要性を強く意識しており、「初速が早い」という顕著な特徴が浮き彫りになりました。
「初速」が上がると、締め切り前に作業を終えることが可能になり、次のタスクの初速を早めることができます。次のタスクを早く始めることができれば、余裕を持って取り組むことができるため、成果を引き寄せることにつながります。
「初速を早める」→「次のタスクの初速が早まる」という好循環を作り出すことが、時間をかけずに多くの成果を出し続けることを可能にしてくれるのです。
海外のビジネスパーソンと比べて、日本人は初速が遅い傾向にあります。
日本には「空気を読む」という習慣が根付いていますから、周囲の目を気にしたり、その場の雰囲気に配慮して、ほかの人よりも早く動くことに躊躇したり、敬遠する人が多いのです。
「空気を読む」という行為を行動学的に見ると、眉毛や目、鼻や口などの微妙な動きから相手の喜怒哀楽を判断することですが、欧米人は絶対にこれをやりません。
曖昧な表現が多い日本人とは異なり、欧米人は「イエス」と「ノー」をハッキリと意思表示しますから、周囲に対する気遣いはあっても、相手の表情や状況から「何かを察する」必要がなく、英語には「空気を読む」を意味する表現が存在しないのです。
眉毛や目の微妙な動きを「微表情」といいますが、日本人は口数が少なく、明確な意思表示をしないため、微表情から相手の感情や思いを推測しています。
上司の顔色から雰囲気を察して、不必要なほど派手な多色刷りの資料を作成したり、会議のための会議をやったりしているのは、その典型です。
それが生産性を低下させる理由の1つであり、初速が遅くなる一番の原因でもあるのです。
仕事の初速を上げるメリットには、大きく分けて2つあります。初速を早くすることによって「時間」や「エネルギー」の配分が最適化され、現代のビジネスに不可欠な「行動実験」を繰り返すことが可能になります。
この2つの効果が、仕事の効率を向上させて、いち早く成果を出すことに結びつくのです。
【メリット①】
大事なところに「時間」と「エネルギー」を集中できる