常識破りの勢いはどこまで続くのか。
任天堂は11月7日、2023年度中間決算を発表した。売上高は前年同期比21%増の7962億円、営業利益は同27%増の2799億円。上期の売上高としては、2017年3月にニンテンドースイッチが発売されて以降、最大となった。
減収減益を見込んでいた通期業績予想も上方修正を行い、売上高は1兆5800億円(前期比1.4%減)、営業利益は5000億円(同0.9%減)と、ほぼ前期並みの水準となる計画だ。上期の販売実績を反映させたほか、前提とする為替レートを1ドル130円から140円に、1ユーロ135円から150円に見直した。
さらにスイッチの通期でのソフト販売本数についても、1億8000万本から1億8500万本(前期は2億1396万本)へと上方修正した。
上期の売上高が伸びた最大の要因は、スイッチの本体およびソフト両方の販売数量が増えたことだ。上期実績は、本体が684万台(前年同期は668万台)、ソフトは9708万本(同9541万本)。5月に発売された「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」の販売本数が1760万本(セルスルー、個人の顧客への販売ベース)を記録し、7月に発売した「ピクミン4」なども好調だった。
本体・ソフトともに前年同期比での販売数量の伸び率は2%前後と、数字だけ見ればそこまで勢いを感じないかもしれない。
ただ、ゲーム端末は販売年数が経つにつれて販売数量も落ちていくのが一般的。2004年11月に発売され、任天堂で過去最も売れたハードであるニンテンドーDSは、販売8年目に入った2011年度の販売台数が510万台だった(前年度に後継機種が発売)。それを考えると、これほど長く続くハードはなかったといえる。
プレーユーザー数は1億1700万人(2022年10月~2023年9月)と増加の一途をたどり、古川俊太郎社長も今年度末に販売8年目を迎えるスイッチについて「未知の領域に入った」と語っていた。
通期のソフト販売本数はわずかに上方修正した一方、スイッチ本体の販売台数は1500万台(前期は1797万台)の期初予想を据え置いた。下期はクリスマス商戦も控えるが、前期は2022年11月に発売された「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」の大ヒットなどで下期の比重が大きかったこともあり、それを超えるのは簡単ではないとの考えからだ。
10月8日に開かれた経営方針説明会で古川社長は「ハードは前年と比べて、そんなに簡単に台数を伸ばしていけるような状況ではない。これからソフトの販売を1本1本丁寧に伸ばしていき、スイッチの新規顧客の獲得と複数台需要を伸ばしていくことが重要だ」と語った。スイッチ本体の長寿命化のカギを握るのは、ソフトの販売戦略というわけだ。
その点、任天堂は下期に向けても強力なタイトルを複数仕込んでいる。10月20日に発売した「スーパーマリオブラザーズ ワンダー」は、横スクロールのマリオシリーズとしては11年ぶりの新作だ。2週間で430万本を売り上げ、マリオシリーズでは過去最高ペースを記録。さらに11月17日には、27年ぶりにリメイクされた「スーパーマリオRPG」も発売される。
ゲームソフトメーカーの間では昨今、特定の端末向けに開発するのではなく、コンソール、PCなど複数のハードに対応したソフトを投入する傾向がより強まっている。デジタル販売の浸透により、これまで家庭用ゲーム機が普及していなかった地域にも、ソフトを提供できるようになったことも大きい。