――引退記者会見では山田哲人選手、そして青木選手と自主トレを行っている村上宗隆選手も登場しました。青木選手が若手にもたらしたもの、与えた影響は何だと思いますか?
髙津 それはもちろん、若い選手たちに聞いてほしいです(笑)。でも、僕から言えることがあるとすれば、それは「闘う姿勢」というのか、「向かっていく姿勢」だと思います。彼は何回も頭にデッドボールを食らって、脳震盪特例で離脱を余儀なくされることが多かった。サンフランシスコ・ジャイアンツ時代には、当時の最速投手の一人である(ジェイク・)アリエッタから頭部死球を食らっています。それでも、ホームベースの近くに立って踏み込んで打ちにいく姿勢を忘れなかった。ちょっと真似できないですよ。
――どうしても、死球のイメージが残って腰が引けてしまうことになりがちですからね。
髙津 そう。普通ならイヤな残像が消えないものですよ。でも、ノリはそうじゃなかった。それは「絶対に打ってやるんだ」という強い気持ちの表れだったと思うし、打席の中で燃える思いがあったから。それは若い選手だけでなく、多くの選手に強い影響を与えていると思いますね。
――シーズン終盤を迎えて、増田珠選手、岩田幸宏選手、伊藤琉偉選手、小森航大郎選手ら若手選手の起用、一軍登録が目立っています。青木選手とともに過ごす貴重な時間を、今後の糧にしてほしいものです。
髙津 まさにその通りで、今は必死だけれども、その一方では何もかも新鮮で楽しい時期だと思うんです。だからこそ、もっと貪欲にガツガツ感を持ってほしい。彼らは白い歯を見せながら楽しそうに練習しています。別に「笑うな」と言うつもりはないです。でも、青木がストレッチをしている姿をぜひ見てほしい。それは、「これから真剣勝負が始まるんだ」という集中力が感じられます。真剣勝負の舞台において、白い歯を見せている選手はいません。若い選手たちに今はそこまで求めていないけれど、青木の取り組む姿勢はベンチ内で勉強してくれたら嬉しいですね。
――さて、ペナントレースもいよいよ終焉のときを迎えます。9月になって、ようやく投打の歯車がかみ合ったナイスゲームも増えてきました。最後にファンの方へのメッセージをお願いします。
髙津 もうすぐペナントレースも終わります。ファンのみなさんには今年も悔しい思いをさせてしまったけれど、最後の最後まで全力で戦うことをお約束します。最後まで「応燕」をよろしくお願いします。
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