――そして、6月14日の対オリックス・バファローズ戦では、ついに奥川恭伸投手が復帰。5回1失点で試合を作って、980日ぶりに勝利投手となりました。
髙津 5回1失点で、きちんと試合を作ったこと。そして何よりも、勝利投手になったことが本当に大きかったと思います。僕自身は、ヤス(奥川)の投球を間近で見るのは久しぶりだったんですけど、「ヤスのことは、これまでのイメージで見るのはやめよう」と思っていました。
――それは、どうしてですか?
髙津 今までのイメージで見るよりは、「まったく新しいピッチャーが投げるんだ」という意識だったし、「今日から新しいヤスが始まるんだ」と考えていました。それはどうしてかというと、「昔はこうだった」とか、「以前はこんなボールを投げていた」という目で見るのは、見方が違うんじゃないかと思いました。
――故障前の姿と、リハビリを経て復帰した現在の姿とを重ね合わせることは、奥川投手にとっては酷であるという考えからですか?
髙津 このことは本人には言っていません。ここで今、初めて話すことですけど、昔のイメージを重ね合わせないで見た方が本人にとっても、見守る側としてもラクだというのか、「その方がいいだろうな」と思ったからです。「ここから新しいヤスが始まるんだ」というお披露目の機会というイメージで、そして大きな大きな期待の目で僕は見ていました。
――監督も投手出身で、何度も故障を経験していますが、「故障前の自分」と「故障後の自分」を重ね合わせて見られるのは辛いことですか?
髙津 うーん、どうでしょうね。それは本人の考え方次第だと思いますけど、ヤスの場合、10日間の抹消期間を経て戻ってきたわけではなく、長い、長い時間を経て戻ってきた選手なので、ゼロからの目で見てあげた方がいい。というか、見た方がいいと僕は思っていました。