自分の身体から出るサインを、自分の精神が理解したことは、誰しもあるだろう。
分かりやすい例なら、肌荒れだろう。
仕事で極度のストレスに晒され、後日、鏡の中の肌荒れに驚いた女性は多くいるのではないだろうか。
肌など気にしない傾向がまだ強めな現代の男性にも、もちろんあるだろう。
だが、自分の身体から出るサインを、自分の精神が理解できなくなってしまうことも実は少なくない。
私を例に取れば、一時期働き過ぎて瞼が痙攣し、ずっとピクピクしている期間があった。
傍から見れば、会社で「おはよう!」と声をかけてくるくせに瞼が震えてキレている人である。挨拶してくんなよそんな奴。我ながら迷惑な存在だった。
しかしながら、当時の私はその自信なさげに痙攣する瞼に対して「疲れている」と解釈せずに「なんかバグった」という、子供でもしないような粗すぎる解釈で乗り切ろうとしていた。
※ちなみに結果はもちろん、そのまま体調を壊した。
皆さんの中にも、肌荒れに始まり、顔の浮腫み、女性であれば特有の臓器への影響など、自身の様々な体の部位が壊れていっているにもかかわらず、それに気づけなくなってしまった経験がある人は決して少なくないはずだ。
しかし、なぜこうなってしまうのか?
前述した研究の背景を考えれば、もう分かった人もいるかもしれない。
そう、実は人間は、自分の身体が出す信号にさえ気づかないことや、その状態が何を意味しているのか理解していないことがよくあるのだ。
人が、自分の身体が発するサインを見逃してしまうというのは、以下の2つによって起こる。
1つ目は、忙しすぎて生活がすさんでしまい、自分の顔を鏡で見なくなってしまうなど、自分への興味・関心が過度に薄れてしまっている場合。
2つ目は、身体の出してくる信号を感じつつも、面倒に感じてしまい、それについて考えようともしなくなってしまう場合。
この2つにより、人間は身体の信号に反応できず、自分を蔑(ないがし)ろにした結果、破滅の道を辿っていく。
その一方で、「実際に血が出ているわけでもないし、殴られて健康を阻害されたわけでもないんだ! 大丈夫だろ!」と、気迫に満ち溢れた堂々たる発言をされる立派な方もいる。
しかし、それは間違いだ。冒頭の研究結果を思い出してほしい。
実際に物理的に殴られていなくとも、SNSを見るだけでも、健康は阻害されて病院にまで通っているではないか。
この事実を無視してはならない。
あなたは、血を流していないだけ。物理的に顔が腫れていないだけ。
実際はダメージを負って、健康でなくなっているかもしれないのだ。
それを必死に身体がサインにして送ってくれている。
勇ましいあなたの精神に、そして本来大事にするべきあなた自身に。
そのサインを無視してはいけない。肌荒れと侮るなかれ、あなたの肌は地続きで1枚の皮膚であり代えは利かない。瞼も同様、数えても2枚しかないぞ。スペア持ってないでしょ?
ここからはお待ちかねの対処法である。
まず、先ほどのおさらい。
どんなに身体から出るサインがあったとしても、気づかなければ対処できない。
次に、気づかなければそれが何を意味するのか分からない。
この問題に対処しよう。
まず、気づくためにお勧めしたいのは「自身との対話」である。
毎朝、洗面台に立つ際に自分の身体を見つめてほしい。
肌荒れはないか? 浮腫んでないか? 傷はないか? 血色はどうだ?
このように、自分と対話するように点検作業を行うのだ。
少しでも気になるところがあれば、次の段階に移行する。
次の段階では、「身体からのサインが何を意味するか究明する」。これだ。
やり方はそれぞれだが、一番いいのは原因を考えることだろう。
・明らかに顔が浮腫んでいる
⇒原因はきっと、昨日深夜までアルコールを飲んでいたことだ。今日は水を多めに飲もう。
・睡眠は取っているのに肌荒れがひどい
⇒突然荒れたところから見ると、最近抱えているストレスが原因かもしれない。ストレスの根源を断てるか考えてみよう。
このように、自分の身体のサインをしっかりと確認し対策を取ることが、見えないダメージへの対処になり得る。
身体から出るサインを見逃してはならない。それはあなた自身の健康管理にとって、何より重要な情報なのだから。