社員成長の決め手は、人事が9割

経営者や人事はもっと「採用」に慎重になれ

2024.01.10 公式 社員成長の決め手は、人事が9割 第16回

そもそも「採用」という手段がベストなのか?

経営者や人事担当者の悩みの多くは「採用」に関することかもしれません。人は採ってみないとわからないため、採用は常に失敗と背中合わせ。私も数多くの失敗をしてきましたが、適切な対策をすることによって、その確度を上げることはできます。

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中小企業が採用を行うのは、社員が辞めてしまったり、新しい事業を始めたりするタイミングが多いでしょう。その際、人事担当者はまず何をするべきでしょうか。

まず必要なのは、「本当に採用が必要なのか?」と考えること。人手不足を補う手段は「採用」だけではありません。採用はコストがかかります。リスクもあります。社内に適切な人材はいないのか、人が余っている部署はないのか。まずは「社内の人事異動ではダメなんだっけ?」ということから検証してみてください。

人手不足を解消する手段は「人」に限りません。近年は多くの企業のオフィスワークがRPAに切り替わっています。事務作業などを自動化できるソフトウェアロボットを使えば、人を採用しなくても済むかもしれません。業務によっては、ChatGPTなどの高度なAI技術を使ったサービスでも対応可能かもしれません。「人」か「機械」かも検討したほうがいいでしょう。

これが「人員計画」または「定員計画」と呼ばれるものです。経営予算から人件費を割り出し、誰をどこに配置するか、人数は足りているのか、能力的に足りているのかなどを検証し、適切な対策を練る。「人員計画」や「定員計画」については、第11回で詳しく解説しています。こちらも参考にしてみてください。

社内に適切な人材がいない。AIやロボットでも対応できない。やはり外から「人」を採るしかない。採用を選択する場合は、まずはこれが大前提となります。

採用するなら「正社員」以外の方法も検討してみる

次に考えるべきは、「本当に正社員がいいんだっけ?」。雇用契約には、正社員以外にも、契約社員、パート、アルバイトなど、さまざまな手段があります。また、雇用契約以外にも、派遣、請負、業務委託など、多くの契約形態があります。近年はフリーランスの人を活用する企業も増えてきました。

働き方は多様化しています。ハイスペックな人材を採ろうとしても、最近は雇用をするのが難しくなってきました。優秀な人材は自身のスキルを活かしてさまざまな企業で活躍できるため、雇用契約で縛られることを嫌います。この時代に「正社員がいいです」とこだわる人ほどレベル感としては低いケースも増えています。優秀な人材を採りたいのであれば、請負や準委任でフリーランスと契約する方法もあります。

外から人を採る場合は、雇用契約だけではなく、それ以外の方法も改めて検討してみてください。「雇用契約」と、最近増えている「請負契約」や「委任・準委任契約」のいちばん大きな違いは、会社の指揮監督関係に入るかどうか。

雇用契約というのは、会社の指揮監督関係のもと、一定の規律に従い「労働者」として労働を提供することです。仕事の依頼や業務従事に関する諾否の自由はありません。勤務時間や勤務場所も会社に指定されます。要は「会社の命令に対して断る権利がなく、言われたことは言われた通りにやらなくてはいけない」という契約です。(あくまで労働契約の範囲内ですが)

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一方、請負契約や委任・準委任契約というのは、会社の指揮監督関係に入らず「事業主」として独立し仕事を完成させること。やりたくない仕事を依頼されたら、断ることもできます。勤務時間や勤務場所を指定されることもなく、結果に責任を追うことだけが求められます。要は「成果さえ出せば、あとはすべて自由」という契約です。

このような契約形態の違いも確認したうえで、それでも「雇用契約がいい」となったら、「採用」という手段を選ぶようにしましょう。そして採用をする場合も、正社員か、契約社員か、アルバイトか、パートか、慎重に検討する必要があります。

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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