人事担当者に必要な資質として「公平性」を挙げる人もいます。公平とは、みんな一緒で、すべて等しいこと。人事は社員を公平に評価すべきであると。私はこの考え方には異論があります。人事担当者は「公平」ではなく「公正」であるべきです。
近年の人事は、成果や行動によって社員に「差」をつける考え方が主流になっています。成果が上がれば、評価も上がり、成果が出なければ、評価も下がる。当然、評価が高い人は給与も高くなり、評価が低い人は給与も低くなります。それを公平にしようとするのは、社員の努力を無にする行為ではないでしょうか。
人事担当者に必要なのは、会社の価値観に基づいて、公正に判断をすることです。公正とは、偏りがなく正当なこと、はっきりしていて正しいこと。
人事評価であれば、明確な評価基準を示し、偏りのない正当な評価をする。その基準に基づいて、正しい処遇をする。人事担当者には、このような姿勢が求められます。評価基準があるのに、それを無視した評価をするのは公正ではないですよね。
ただ、これは簡単なことではありません。評価者同士の会議では「彼の息子さん、今度大学生なんだよね。だから低い評価はつけられないよ」「たしかに成果は上げてないけど、役職を外すのはしのびない」といった会話が日常的に交わされている現実があります。
評価制度はあっても、実際には機能していない。成果と関係なく、給与や役職が決まっている。それによって社員のモチベーションが下がり離職者が増えている。こうした会社も少なくありません。だからこそ人事は、特に「公正さ」が必要なのです。
人には必ず好き嫌いがあります。人事評価もいわゆる「好き嫌い評価」と言って、「この人は好きだから評価する」「この人は嫌いだから評価しない」という傾向になりがちですが、それは公正ではありません。そういう場合に適正な評価へと導いていくことも、人事担当者の重要な役割です。
そして、人事担当者自身も「自分は公正に評価を運用できているんだっけ」「この人を課長にするということだけどそれは本当に正しい判断なんだっけ」と、客観的に考えられることが必要です。
会社には、いろんな社員がいます。「あの人、いい人なんだけど、仕事できないよね」という人もいれば、「あの人、仕事はできるけど、一緒に働きたくないよね」という人もいます。こういう人たちをどのように評価するのか。
いい人であっても、仕事ができなければ、やはり「仕事はできない」と評価しなくてはなりません。「いい人だから、かわいそう」という観点は、公正ではないでしょう。
仕事はできるけど、一緒に働いたくない人も、仕事ができることについては評価しつつも、それ以外の部分では厳しい評価をする必要があります。
成果や行動など、見るべきポイントを明確に分けて要素別に評価し、冷静な判断を下すこともできる。これが人事担当者に求められる資質です。
いい人であっても、成果を上げられなかったり、問題を起こしたりした場合は、人事は退職勧奨をしなくはならないこともあります。もちろん「かわいそう」という感情は湧きます。しかし、就業規則に「〇〇の場合は退職とする、解雇とする」と書いてあったら、それに基づき対応していなければならない、人事とは、そういう仕事です。
物事を多面的かつ構造的に考えることができる。「公平」と「公正」を取り違えない。会社の価値観に沿った冷静な判断ができる。この3つは人事担当者には特に必要な資質ですが、他にも大事なポイントがあります。それについては次回、詳しくお伝えします。
つづく