キャリアアップ、資格試験、公務員試験、TOEIC、リスキリングなどにおいて、予備校や専門学校に頼らず一人で勉強するのはうまくいかないものです。いわゆる「独学」が難しいといわれる理由は――人間の意志がそもそも弱いからです。ただし、人間の意志は弱いという事実を受け入れることで、独学の成功率を高めることができます。この本には、忙しい社会人でも実践できる、独学を成功させるためのノウハウが満載です!
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つらい独学では「続けること」が何よりも大事です。とはいえ、強靭な意志を持つ人を除いて努力は長続きしません。それでも、試験に合格するには毎日のノルマを継続してこなす必要があります。つまり、「努力は長続きしない」と「努力を継続しないと目標は達成できない」という矛盾を解消することが求められるのです。そのために、毎日テキストを開くという努力を、努力と感じさせないルーティンにすることが大切です。
もしあなたに独学を挫折した経験があれば、少し振り返ってみましょう。次の二つの、どちらかのパターンだったのではないでしょうか。
① 日々の勉強がつらく、試験までたどり着く前にあきらめてしまった
② 十分に勉強したとは言いがたく、実力不足のまま試験を受けてやっぱり落ちた
共通点は、「適切な努力を適切な期間にわたって継続できなかった」ことです。
合格するには、目標の試験から逆算することが大切です。最初に試験に合格するのに求められる実力を分析し、試験日までにその水準に到達するまでの勉強量を確認します。そうして行うべきことを決めたら、ノルマを1日単位に分割して落としこみ、あとはその作業を継続するだけです。定期的に模試を受けて実力が予定どおりに伸びているかを確認し、順調に伸びていなければ、軌道修正して作業の内容を変えていきます。
こう書くと簡単ですが、実際にやるのは精神的にとてもきついものです。
独学の場合は、誰も自分を監督してくれないので、サボるのは自分の意志一つです。スマホを触った瞬間に、あっという間に時間が過ぎてしまった。しばらく独学を続けると、誰でもこんな体験をすることになります。そもそも、毎日勉強を開始するにはなかなかのエネルギーが必要です。「やる気スイッチ」のような便利なものは存在しません。テキストを開く前に夕方になり、気づけば1日が終わってしまった、というパターンもありえます。
少し視点を変えてみましょう。毎日の生活において、ずっと続いていることを考えてみます。
たとえば、食事や睡眠です。特殊な事情がある人を除いて、食事をしない人も、寝ない人もいないと思います。これらは一定の時間になればお腹が減りますし、眠くなるので、毎日できるのは当たり前のことです。
ほかに、多くの人が毎日続けているものとして、仕事があります。
土日は休み、月曜の朝から仕事モードに頭を切り替える人は多いはずです。そして、金曜の夕方まで、仕事中心の日々が続きます。
冷静に考えると、これは少し不思議なことです。仕事が好きでたまらない、という人は別として、多くの人は日曜の夜には気分が重くなります。どうしても純粋に楽しいとは言いがたい仕事をしていて、休日より平日が好きだという人はとても珍しいと思います。それにもかかわらず、ほとんどすべての人は、憂鬱な気持ちを抱えながら、出勤の準備をして、駅に向かいます。
もちろん、出社しないと怒られますし、最悪クビになってしまいます。給料がもらえず、生活できなくなる可能性もあります。そのようなマイナスの影響を考えると、仕事に行くのは当然の判断です。
さて、月曜日の朝に出勤準備をするときの心境を考えてみましょう。
たいていの人は、いちいち「無断欠勤したらどうなるか」について考えていません。決まった時間に起き、普段どおりに身支度をして、家を出ていると思います。
これは、「月曜の朝は仕事に行く」ということが、ルーティンになっているからです。多少のストレスを感じることはあるかもしれませんが、職場には自動的に到着しており、時間が大きくずれることも少ないはずです。
独学に戻って考えてみましょう。
これまで書いたように、余暇をつぶして行う勉強は、多くの人にとっては仕事と同じように楽しいものではありません。勉強を始めるのにはエネルギーが必要です。スイッチを入れるやり方として、「よしやろう!」と自分に気合を入れる方法が考えられます。この場合、疲れているときはついつい楽なほうに心が向いてしまい、サボりがちになってしまう危険性があります。
そこで、無理なく続けるために必要なのが、勉強を日々のルーティンに入れてしまうことです。食事や睡眠と同じように、決められた時間に勉強するスケジュールを組みこめば、テキストを開くときに感じる大きいストレスを回避することができ、予定外に休んでしまうことが少なくなるはずです。