それでは、具体的にルーティンをつくる方法について説明します。
大切なのは、勉強開始前と日常生活を無理に大きく変えない、ということです。先ほどの失敗パターンを思い出してください。
まず、①の「日々の勉強がつらく、試験までたどり着く前にあきらめてしまった」場合について考えてみましょう。これは、自分への負担が大きすぎて、目標にしていた試験前に限界を迎えた状態です。私は最初の公認会計士試験に3か月で挫折しましたが、私と同じように休みを入れずに勉強に全力を注いだパターンが多いのではないかと思います。一般的な人の心は、休養なしでつらいことを続けられるほど強くできていません。適切に休養を入れなかったことが失敗の主な原因です。ただし、このタイプに当てはまる人は、どちらかというと少数派でしょう。
続いて、②の「十分に勉強したとは言いがたく、実力不足のまま試験を受けてやっぱり落ちた」場合について考えてみます。何度も試験を受けても結果が出ない人は、こちらに当てはまる場合が多いです。このパターンにありがちなのは、日々の勉強時間にムラがあることです。たとえば、月曜日に5時間勉強して、火曜日は1時間勉強、水曜日は休み、木曜日は5時間勉強する、といった具合です。このように毎日の勉強時間がバラバラだと、毎日のノルマを達成することが難しくなります。なぜなら、「今日できなかった分を明日にまわそう」という考えになりやすく、次第に順調にスケジュールを消化する日が少なくなっていくからです。気がつけば、どこまでが本来のノルマかわからなくなり、十分な実力を身につける前に試験の日を迎えてしまうことになります。
この二つの問題は、勉強をルーティンに組みこむことで解消できます。
私は「勉強の大半を通勤中の電車で行う」というルーティンをつくっていました。
もちろん、通勤時間以外にも、1日のうちで勉強できる時間はたくさんあるので、その時間も勉強にあてます。たとえば、起きた直後や寝る直前、昼休みや会社の始業前などです。毎日のタイムスケジュールは次のような感じです。
だいたい朝6時に起床、6時30分に家を出て6時50分の電車に乗るところから勉強を始めます。8時20分ごろに会社に着くと、始業の9時までは空いている会議室で電卓を使った計算を解くなど、電車ではできない問題をこなします。昼休みは弁当を持参して移動時間のロスをなくし、15分ほどで昼食を終えたら、40分ほど計算問題を解きます。終業後は30分ほど駅のベンチでテキストを読んでから電車に乗り、各駅停車で帰宅します。家に着くのは19時半から20時半ごろだったように記憶しています。
このルーティンで確保できる勉強時間はだいたい1日5時間半です。なお、帰宅後は自由時間として、週に2回くらいは趣味のブラジリアン柔術の練習に行っていました。
仕事をして、1日5時間半勉強して、趣味で格闘技をするというのは客観的に見るとかなり無理があるように思います。ですが、生活のリズム自体は変えておらず、スキマ時間を活用しているだけなので、つらいと思ったことはありません。淡々と日々が過ぎ、順調に実力が伸びたという印象です。
うまくいった要因の一つは、無理なくスケジュールを進められるルーティンをつくったからに他なりません。毎日同じことをしていると、「努力している」という感覚が薄れていくため、継続がとても楽になります。