キャリアアップ、資格試験、公務員試験、TOEIC、リスキリングなどにおいて、予備校や専門学校に頼らず一人で勉強するのはうまくいかないものです。いわゆる「独学」が難しいといわれる理由は――人間の意志がそもそも弱いからです。ただし、人間の意志は弱いという事実を受け入れることで、独学の成功率を高めることができます。この本には、忙しい社会人でも実践できる、独学を成功させるためのノウハウが満載です!
この連載をまとめ、加筆・改稿したビジネス書『意志の力に頼らないすごい独学術』(石動龍)が、アルファポリスより好評発売中です。
金曜日の昼になると、頭の中でいつも同じ曲のイントロがリフレインします。
金曜の午後になると仕事がはかどると歌った、有名な流行曲で、私はドンピシャの世代です。
土日が休みのサラリーマンだと、この気持ちはよくわかるはずです。
逆に、もっともやる気が出ないのは月曜日の朝、もっと言えば通勤途中です。駅に向かう足取りが重くなり、電車の中もなんとなくよどんだ雰囲気です。
なぜこんな気分になるのでしょう。
当たり前ですが、休みは楽しいからです。
思いきり遊んでもいいし、何もしないで家にいることもできます。時間の使い方を自由に決められます。
休みがないとしたら、どんな仕事も長く続けられないでしょう。
ストレスが限界までたまり、いつか体も心も壊れてしまいます。
独学も同じです。
試験に挑む場合は、休みをいかに確保するかが大きなポイントです。
休養なしで努力を続けられるほど、人間は丈夫にできていません。それほど心と体の疲労回復は重要です。
合否を分けるといっても過言ではありません。
生々しい動機に基づくニンジンをぶら下げ、勉強へのモチベーションが高まったら、何よりも先に休みの予定を決めましょう。
難関試験に挑戦する日々はとにかく苦しいです。
受かるかどうか見えないまま、人生の貴重な時間をささげることになります。
社会人受験生であれば、使える時間は大幅に限られます。必然的に、多くの人は、余暇を削ることになります。
それはまるで、ゴールのないマラソンのようです。
よくある失敗はこうです。
頑張ろうという気持ちが先走り、休みなしのスケジュールを組んでしまいます。
最初は順調に進んでも、次第に疲れがたまり、ノルマをこなせなくなっていきます。
そのうち、予定が大幅に遅れてテキストを開くこともなくなり、「自分にはどうせ無理だった」と目標をあきらめることになります。
じつは、これは最初に挫折したときの私です。
最初に公認会計士試験に挑戦したときは、資格の専門学校に通っていたのですが、3か月ほどで行けなくなりました。
このとき、スケジュールに休みを入れていませんでした。
週7日、朝から晩まで勉強していました。
標準的な1年半で受験するプランだと、1コマ90分の授業が1日に2~3コマあります。これに加えて予習、復習をすると、1日の勉強時間は10時間を超えることもザラです。
土日も休みなく机に向かうことになり、もちろん趣味に割く時間はありません。
代わり映えのない毎日にだんだん集中力がなくなり、目を閉じてもテキストの内容が頭から離れません。
楽しいことは何もなく、「明日も勉強か……」と憂鬱な思いで毎日を過ごしていました。
日常から色が消えてしまい、すべて灰色になったかのようでした。
当時の趣味は主に格闘技とゲームでした。
学校の勉強についていけなくなったきっかけは、競馬ゲームの『ウイニングポスト』だったように記憶しています。
起きてから寝るまで勉強ばかり、休みのない日を3か月ほど続けていました。
疲れきったある夜、アパートの押し入れに封印していたPSPの箱が目に入りました。合格したらまたやろう、とソフトと本体をセットにして、ガムテープで開けられないようにしていたものです。
「頑張ってるし今日くらいはいいかな……」
そう思ったのが運の尽きです。箱を開けてスイッチを入れると、気づけば夜が明けるまでプレイしていました。
もちろん、次の日は予定していた講義を受けられません。
スケジュールが狂い始め、それから1か月後にはまったく学校に通えなくなりました。
専門学校の学費は、コースによっては50万円以上かかります。
受験しなくても、当然ですが費用は返ってきません。挑戦をやめると決めた瞬間に、大金をムダにしたことが確定します。
それでも、受験をやめると決めた瞬間は、後悔よりも解放感で心が満たされました。
羽が生えたような気持ちになり、再就職を決めると同時にインド旅行に出発しました。
デリーやバラナシなど北インドを中心に1か月ほど周遊し、安宿に泊まりながらインド人と話したり踊ったりしているうち、景色に彩りが戻ったように思います。