このように、資格試験を受験するときは、楽しい余暇をつぶして、つらい勉強を繰り返す日々が続きます。
さらに、社会人受験生であれば、仕事と並行して勉強することになります。
家に帰ったら好きなコンテンツを見ながら一杯、とはいきません。
酒も飲まず、食事を早々に済ませたら机に向かうことになります。アフターファイブは楽しい時間ではなく、苦しい時間に変わります。
そのうえ、独学の場合、仲間はいません。
専門学校へ通っていれば、同じ苦労をする友人と支え合えるかもしれません。
独学はひとりぼっちで苦しさと向き合うことになります。
ツイッターなどのSNSで受験友達をつくる人もいるようですが、過度に馴れ合う場合は、勉強時間を削ることになるので、プラスにならない印象もあります。
いずれにせよ、最後は自分で自分を奮い立たせることが必要です。
まだ勉強を始めていない人は想像してみてください。
金曜に休みは何をしよう、と思うことはなく、土日は勉強や模試や講義で埋まっています。
考えるだけで憂鬱になるでしょう。
ところが、世の中には「超人」がいるものです。
私の趣味の格闘技では、1日8時間、週7日練習する人がいました。
資格試験でも、法人税法を勉強し、息抜きに消費税法の勉強、休憩に簿記論を勉強するという理解できないスケジュールで税理士試験に短期合格する人を見ました。
そういう人に遭遇するたび、「無理だ!」と思います。
このような人は絶対にモデルにしてはいけません。
私をはじめとして多くの人は、このような超人ではなく、普通の人だと思います。
とくに私は、基本的になまけもので、すごい人の方法論はとてもマネできません。特別に頭がよいわけでもありません。
仕事をしていても、すぐにニュースが気になったり、マンガの続きが読みたくなったりして、集中できなくなってしまいます。
凡人には凡人の戦い方があります。
仮に、1週間でテキスト100ページ分を理解できるとしても、1か月で挫折したら、合計で400ページしか学習できません。
それよりも、1日休みを入れて週に85ページのペースで勉強できれば、2か月目が終わったころには合計で680ページを理解できます。
一定のペースで勉強すること、続けることが何よりも重要なのです。三日坊主、という言葉のとおり、3日くらいであれば誰でも頑張れるものです。
大切なのは4日目以降も努力を続けることで、結果はその先にだけついてきます。
続けるためには、「ここまで頑張ったらひと休みできる」というラインを設けることが大切です。
学生時代の長距離走を思い出してみてください。
息が絶え絶えになり、脇腹が痛くなってきても、ゴールが見えれば足取りが軽くなったはずです。
休みを明確に意識できれば、最後の力を振り絞ることができます。
適切に休みを取り、体力と気力を充実させ、ペースを保つことが合格への近道です。
そして、休み方にも、二つの大きなポイントがあります。
短期合格を目指す場合、一つは、「定期的に休みを入れる」こと、もう一つは「2日連続で休まない」ことです。
難関資格試験はとにかく範囲が広いので、多く休みを入れてしまうとスケジュールを消化できません。
それでも休みを入れなければ、受験まで完走することはとても難しくなります。
あらかじめ「体力と精神力を回復するための日」と割りきって、週1日を休日にしておくことが受験まで学習ペースを保つ大きな秘訣です。
なお、疲れたら休む、という方法はおすすめしません。
自分自身が疲れているかどうかを正しく判定することはできません。
己に厳しい人であれば疲れきるまで勉強を続けてしまいますし、自分に甘い人であれば必要以上に休むようになります。
真面目な人は予定外に休むと罪の意識を感じてしまい、せっかく休養してもストレスを解消できない可能性があります。
大事なのは勉強と休みのリズムを作り、それを続けることです。
また、連続で休むことは避けるべきです。
普通の人は、テキストを1回読んだだけで内容を理解することはできません。
うるし塗りのように、何度も何度も同じ部分を読みこんで、はじめて正しく内容がわかるようになります。
難関試験を勉強する場合、2日連続で休むと、範囲を一周するまで時間がかかってしまい、同じところを読むまでの間隔が長くなります。
時間がたてばたつほど、内容はあいまいになるので、同じ部分をインプットするのに余計に時間がかかります。
結果として、学習効率が落ちてしまいます。
『東大王』などで有名なクイズノックの伊沢拓司さんも、「2日連続で休むと習慣になってしまう」という旨をラジオ番組で言っていました。
私の場合、1回目の公認会計士試験は、休みなしで1日10時間以上勉強し、3か月ほどで挫折しました。
合格した2回目は週に1日休み、1日の勉強時間は約5時間半に抑えました。
加えて、2回目の挑戦では、趣味も続けるようにしました。
早朝と通勤時間をメインに勉強して、帰宅する19時半には1日の勉強を終えるようにスケジュールを組みました。
帰宅したあとは自由時間です。
帰宅後はブラジリアン柔術の練習に、週2回ほどのペースで通っていました。
土曜か日曜のどちらかはテキストを開かないことにして、家族で出かけたり、のんびりしたりして過ごしました。
その結果、受験期間を通じて、勉強がつらいとか、続けられない、と思ったことは一度もありませんでした。
三日坊主の言葉のとおり、凡人は3日以上の行きすぎた我慢は続けられません。
一方、戦略的に休養することで、凡人であってもノーストレスで受験生活を送ることができます。
しっかり休むことが短期合格への近道です。
急がば回れの精神を忘れず、つらい日々の中に楽しみを見つけることで、長い受験生活を乗りきりましょう。