質より量、これは資格試験の短期合格における鉄則です。
私は司法書士試験でも公認会計士試験でも、10日ほどで全試験範囲を一周していました。回数をカウントしてはいませんが、司法書士試験も公認会計士試験も、少なくとも10回以上は試験範囲を最初から最後まで勉強したと思います。
難関資格試験は試験範囲がとにかく広いです。専門学校の教科書を机の上に積み上げると、見上げるほどの高さになります。
成果が何年も出ない、よくある失敗は、亀のような歩みで一ページ目から教科書を読み進め、一年間で試験範囲を一回だけこなして本番に臨むパターンです。
高校のテスト勉強や大学受験を思い出してください。テスト前は試験範囲を横断して勉強したはずです。大学受験前には、過去問に取り組み、教科書の苦手な部分を何度も読んだでしょう。
資格試験においても、予習と復習では、圧倒的に復習が重要です。なぜなら予習して授業に臨んでも、覚えた内容はすぐに忘れてしまうからです。
また、私の経験の範囲では、公認会計士試験や、司法書士試験では、暗記すべき項目はあまり多くありません。正確に言えば、覚えることが多すぎて、暗記で対応するのは現実的ではありません。
特に、論述形式の問題は、穴埋め問題とは異なり、論理的思考力が問われます。
知識を表面的に吸収しているだけでは、角度を変えた質問に対応できません。
論述問題の回答は、採点者に内容を理解していることをアピールすることが必要です。経験則になりますが、多少の用語に誤りがあっても、本質部分が間違っていなければ、合格水準の得点を得られます。
つまり、問われた内容に対し、適切な内容を自分の言葉で説明できれば、合格に近づくといえます。各論点を単純に暗記するだけでは足りず、テキストの内容をかみ砕き、背景にある論理を理解することで、苦手意識がなくなります。
そのために、試験範囲をなるべく多く回転させる方法をおすすめします。
音楽を聞いていると、特に意識しなくても歌詞とメロディーを覚えることがあります。
勉強も同じで、何回も何回も同じところを読んでいると、「もういいよ……」という感覚になり、内容が自然にインプットされます。一回見たり、聞いたりしただけで覚えられないのは当たり前です。とにかく量をこなすべきです。
このような内容を書くと、「試験範囲を10日でこなすのは不可能」というコメントをもらうことがあります。確かに、私も合格した経験がなければ、膨大な量のテキストを前に、「無理だ」と感じてしまうかもしれません。
それでは、どうすればよいでしょうか。
答えは、「無理してでも速く読む」の一点です。
正確には、内容を理解することを目標とせず、ページの記載内容を時間内に目で追うことを目標にすべきです。内容の理解は二の次で、とにかく量をこなすことが第一歩です。
初学者の間は、テキストに書いてある内容はほとんど理解できません。そのため、じっくり読んでもほとんど意味がありません。それでも、何度も何度も同じところを読んでいると、そのうちある程度の内容が理解できるようになります。テキストの内容がおおむね理解できるようになれば、合格まではそれほど遠くありません。完璧に内容を覚える必要はなく、過去10年の過去問を理解して回答できるようになれば、合格水準の知識がついたと判断してよいでしょう。
誤解している方がたまにいるのですが、難関資格試験であっても、テキストに書いてある以上のことを覚える必要はありません。資格試験の合格はあくまで通過点であり、実務において学ぶべきことを合格段階で身に付けることは求められません。
必要な知識は、経験を重ねながら覚えていけば、十分に間に合います。逆に、どんなに知識があっても、合格しなければ士業として働くことはできません。合格までは割り切って最短ルートを進むべきです。
難関資格試験が手ごわいと言われる理由は、一つ一つの論点の難しさではなく、範囲の膨大さにあります。記憶力が一般レベルであれば、一回や二回論点に触れただけでは理解できないのは当然で、そのような論点が複数あると、知識に穴や漏れが出てしまい、本番での失点につながります。