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「--…あきらちゃん、わたしの大事な大事な友だち。これからもずっと」
----私にそう言った女の子は、鏡のなかにいた。
※ ※ ※
「お嬢様が…っ! お嬢様がー!!!」
「な、な…」
いつも通り目覚めた私は、
「…どこ、ここ」
部屋をぐるりと見渡して血の気が引く。
バカデカイベッド。
高い天井。
まったく知らない部屋にいた!
※ ※ ※
銀色の髪の男が私に聞く。
「----おまえ、何者だ?」
「目的はアリス様の力か。こんなちんちくりんに彼女の身体を乗っ取れるほどの力があるとは俄に信じがたいけど…、まあ、話は引き摺り出してからだな」
違うよ! そんなこと考えてないし!
※ ※ ※
鏡に映った呆然とした表情のアリスが私を見返している。
…もしかして。
「私がアリスになってる!?」
※ ※ ※
「正体が露見しないよう大人しくしていろ。…首と胴体を離したくないなら」
…私、もしかしてとんでもない状況に立たされているじゃないの…?
「お前、名前は?」
「あきら…真澄あきら」
鏡に映っているのは間違いなくアリスで、私じゃない。
※ ※ ※
「…ん?」
本のページの間に何か挟まってる?
パラパラと捲ると、ぽろっとページのすき間から落ちるものがあった。
床に落ちたそれがきらりと光る。
「その…破片は…」
※ ※ ※
「『魔宝石、消え去る刻大いなる厄災訪れん。救世主、遥か時空の彼方より来たりて、魔導書を手に、これを直し、厄災を阻止せん』」
「さっきもそれ言ってたよね。それは何なの?」
「この国に昔から伝わっている予言の言葉だ。歴史学をかじった者なら誰でも知っている」
「へぇ〜」
古文が苦手なだけに我ながらアホみたいな反応しか返せない。
「随分と呑気な反応だけど」こめかみを押さえたフィンが続ける。
「いいか、これはお前のことを救世主だと言っているんだぞ」
「は…え、救世主!? 何かの間違いでしょ!?」
※ ※ ※
「魔宝石を元に戻し厄災を阻んだ救世主は、その後再び遥か彼方の時空の向こうへ去ったと言われている」
「まさか…」
「つまり、魔宝石を元に戻さなければお前は元いた世界に還れない、ということだな」
「は、はあー!?」
「これからよろしく頼むよ。救世主様?」
よろしくしたくないよ!!
文字数 12,101
最終更新日 2024.09.23
登録日 2023.09.24
「くっそー…こんなの給金に見合わん。ぜったい追加で請求してやるからな…」
俺は腹の底から叫んだ。
…心の中で。
王都からはるばる来た俺に与えられた仕事は、
「ヘーゼルくんに取り入り、彼の一挙手一投足を見つめなさい」
---幼い子どもの監視役だった。
「庭のお花を見ていたんです。おかあさんが好きな野薔薇が咲いているから」
窓辺から庭を眺めてヘーゼルが言う。
不自由となった脚を車椅子に乗せて。
「観察? 監視の間違いではありませんか?」
あんな小さな子どもを監視だって?
「彼は唯一の生還者です。有力な情報を得られる可能性があるのは、もはや彼しかいない。貴方には期待していますよ、アレックス・コストナー」
村に蔓延する謎の病。
その唯一の回復者がヘーゼルだという。
病かなんだか知らないが、金を積まれるならやってやるさ。
楽勝の仕事だと拳を握った矢先、
「----魔女、ですか?」
俄に暗雲が立ち込める。
「ヘーゼル様は魔女を退けた英雄の血筋なんですよ」
魔女伝説?
時代錯誤も良いとこだ。
今は科学の時代だぞ。
「…本当にあったことなのです」
たった8歳だ。
生まれて8年しか生きていない子どもだぞ。
「神がいるのなら、悪魔も、魔女もいる。ねえ、先生。そう思いませんか?」
…だったら。
幼い子どもがあんな目をするか…?
「は…、か、隠し通路…?」
蔓延する原因不明の流行り病。
領地に伝わる魔女伝説。
子どもが隠している秘密。
その一端に触れたとき、少女の紅いくちびるが弧を描く。
「----可愛いでしょう? わたしのオモチャ」
俺の一攫千金の仕事はどうなる!?
※ 実際の本編のテンション及びセリフとは少々異なる場合があります。
文字数 15,225
最終更新日 2024.07.20
登録日 2023.10.18
「お前、今日からここで働け」
----私の雇用主は、齢10歳にも満たない男の子だった。
限界社畜さん(♀)が、怪異と戯れたり、ちょっぴり危ないめに遭ったりしながら日々お仕事に奔走するおはなしです。
社畜さんの愉快なお仲間も出てきます。
「あンの上司め、いつか訴えてやるからな!」
一話完結型の短編連作。
時系列はその時々で違います。また、話と話は繋がっていなかったり、繋がっていたりします。
ちなみに、社会人としてのノウハウは期待できませんので悪しからず。
エブリスタにも同じものを投稿しています。こちらは同時投稿としたいと思います。
文字数 57,686
最終更新日 2024.05.03
登録日 2022.01.03
――――時は平安。
侍従の君は大内裏で今をときめく貴公子としての名をほしいままにしていた。
帝からの覚えもよく、若いながらに侍従の位を得、順風満帆の貴公子には、ひとつの秘密があった。
侍従の君の名は、範子(のりこ)。
彼女は男装の貴公子であった。
ある時、宿直の任に就いていた範子は、闇に紛れる不審な影を目撃する。
追い詰め、掴んだ袿を剥いだ先で、
「敦宣…!?」
「範子さま…」
思いもしない人物と出会うこととなる。
名を敦宣(あつのり)。
彼もまた、右大臣の末姫として暮らす女装の姫君であった。
※エブリスタにも同じものを投稿しています。
文字数 43,514
最終更新日 2023.09.24
登録日 2022.01.01
旧家、月瀬家。
その本家の一人娘が声をなくしたという。
彼女の名を朔良(さくら)といった。
心理カウンセラーとして修行の身の昭仁(あきひと)は、東京から遠く離れた山間の村にある本家に呼び出され、彼女の声を取り戻すことを厳命された。
蝶よ花よと育てられたはずの深窓の令嬢。
本家にやって来たものの、彼女の声を取り戻すことが出来るだろうかと悩む昭仁に、
「――――昭仁兄さん、僕、男ですから」
そう言い放ったのは、朔良そのひとだった。
※同じものをエブリスタにも掲載しています。同じものを載せさせて頂くにあたり、せっかくなのでこちらでは加筆修正(大筋に変更なし)したものを掲載しようと思っています。
文字数 49,337
最終更新日 2022.02.06
登録日 2021.11.14
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