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小五の僕は勉強もスポーツも今ひとつで気も弱いせいで、クラスのリーダーであるアサヒからしばしばパシリをさせられていた。その日も新発売されるトレーディングカードをアサヒの代わりに買うためにショップの前で並んでいた。ところが途中で売り切れてしまい、途方にくれていると、怪しげなおじさんから声がかかり、包装紙にくるまれたカードらしきものを渡される。
帰宅して開けてみると、それは欲しかったトレーディングカードではなく、〔勇気のカード〕という耳慣れない三枚のカードだった。
〔第一のカード。あなたは山で迷子に。安全なところにまで到達できればクリア。鬼教官の指導あり。最低限の装備付き。カードを破った時点で開始。リタイアは許されない。〕
〔第二のカード。あなたが乗った旅客機のエンジンにトラブル発生。緊急着水するので冷静に対処すること。機が海に沈む前に脱出し、海を漂流。助けが来るまで希望を失わずに耐えること。海から完全に脱出できればクリア。鬼教官の指導あり。カードを破った時点で開始。リタイアは許されない。〕
〔第三のカード。マンションに火災発生。あなたは怪しい男を目撃。炎と煙から逃れて脱出し、怪しい男から安全圏に逃れることができればクリア。鬼教官の指導なし。カードを破った時点で開始。リタイアは許されない。〕
僕は馬鹿馬鹿しいとは思っていったんはカードをゴミ箱に捨てたけれど、後になってだんだんと気になり始めた。その夜は、明日アサヒに何をされるかという不安でなかなか眠れなかったこともあり、僕はどうせ何も起きやしないと思いつつ、ゴミ箱から出したカードの一枚目を破いてみた。
気がつくと僕は山中にぽつんと一人で立っていた。それはサバイバルゲームの開始を意味していた……。
文字数 57,205
最終更新日 2024.07.26
登録日 2024.07.25
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