冬ボーナス353万円…半導体製造装置メーカーの給与が突出して高い理由

「たとえば大手電機メーカーの場合はおおよその金額が電機労連(全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会)をベースに決められ、そこから大きく差がある金額を社員に支払うのが難しいです。その点、半導体製造装置メーカーは各社が各年度の業績に基づいて自由に決めやすいという事情があるでしょうし、電機労連に加入している企業も、知名度が高い老舗の大手メーカーほどは電機労連の金額に縛られなくて済むという事情もあるでしょう。

 2013年に米マイクロンに買収された日本の半導体メーカー・エルピーダメモリは、日立製作所と日本電気との資本関係がなくなってからは決算期の営業利益率が一定の数値を超えたら全従業員に賞与を支給するという制度を導入していましたが、半導体製造装置メーカーもそれに近いといえます。

 年間給与が高いといっても、ベースとなる毎月の給料は抑えておいて、業績は良ければ賞与を300~400万円くらいポンと支給するというかたちです。業績が低いと100万円くらいに抑えるので、その分、年間給与も低くなります。このように年間給与が業績に連動して、会社の利益がきちんと社員に還元されるかたちになっていれば、社員のやる気も向上するというメリットがあります」

(文=Business Journal編集部、協力=津田建二/国際技術ジャーナリスト)

東京エレクトロンの強さの秘密

 当サイトは2月29日付記事『時価総額3位に浮上、東京エレクトロンとは何者?純利益3千億円の優良大企業』で同社の経営に迫っていたが、以下に再掲載する。

※以下、肩書・数字・時間表記・固有名詞等は掲載当時のまま

――以下、再掲載――

 今月、半導体装置メーカー・東京エレクトロンの株式時価総額がソニーグループやNTTなどを抜き、1位のトヨタ自動車、2位の三菱UFJフィナンシャル・グループに次ぐ3位に浮上したことが注目されている。一般的にはあまり馴染みのない東京エレクトロンとは、どのような企業なのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 1963年に技術専門商社として創業した東京エレクトロンは、60年代には自社製品の製造にも着手し、86年には半導体製造装置の輸出を開始。3年後の89年には同装置メーカーとして売上高ベースで世界1位となる。

 高い競争力の源泉となっているのが、研究・開発への惜しみない投資だ。国内外14の拠点で開発やコンソーシアムなどとの協業を行っており、25~29年度に計1.5兆円以上を研究開発に投資する計画。さらに今後5年で国内外で計1万人を新規採用する方針を掲げている。少し前には24年4月に入社する新入社員の初任給を一律約4割引き上げると発表したことが話題にもなった。

 業績は成長トレンドで、24年3月期の売上高は1兆8300億円(前期は2.2兆円)、純利益は3400億円(同4715億円)の予想。従業員数は1万7000人(連結ベース)に上る優良大企業といえる。

 半導体業界関係者はいう。

「同社の強みは幅広い分野で世界的に競争力の高い製品を持っている点だが、『伸びる』と踏んだ分野には果敢に研究開発費を投下する攻めの姿勢が成果を生んでいる。強みを持つ前工程に加え、後工程でも主力商品を育てるべく注力しており、全体的に商品構成のバランスが良いのは魅力的だ」

株価はさらに上昇する

 そんな東京エレクトロンの株価も好調だ。米エヌビディアの好決算の発表を受け半導体関連企業の株価が軒並み上昇した22日、東京エレクトロンの終値は前日比6%高の3万6580円、時価総額は17兆2523億円となり、ソフトバンクグループ(SBG)や任天堂、三菱商事や伊藤忠商事などの総合商社などを差し置いて国内3位に浮上したのだ。

「2015年には業界2位の米アプライドマテリアルズとの経営統合が破談となり、競争激しい業界でひとまずは独力での生存・成長の道を探る格好となったが、東京エレクトロンの将来性を占う要素は明るい材料ばかりで、加えて研究開発への投資も堅実かつ積極的に行っている。よって、同社の株価は現在でもまだ割安感があり、さらに上昇すると予測される」(金融業界関係者)

 また、半導体業界関係者はいう。

「唯一懸念材料があるとすれば中国市場だ。米国による半導体輸出規制を受けて中国は半導体の国内生産を増やしており、東京エレクトロンは中国メーカー向けの売上が増えている。直近では売上高のうち中国向けが約半分となっており、今後、米国による規制強化など不確定要因が生じれば影響を受ける可能性がある」

(文=Business Journal編集部)