メルカリで高額品の出品はナンセンス…窃盗被害続出の原因は「運営の緩さ」

 返品詐欺のようなトラブルを減らすためには、過去の取引における評価などが一定の条件を満たさないと購入できないなど利用基準を強化するということになりますが、もともとメルカリは誰もが気軽に出品・購入できることをウリとして、それによってここまで普及したという経緯があり、それを大きく転換させるとユーザー離れが起きる可能性もあるため、非常にハードルは高いでしょう。

 個人間のCtoCで売買するという性質上、このような被害を完全になくすことは難しいと考えられますが、実はBtoCのアマゾンや楽天市場でも同様の問題は多発しています。アマゾンでは購入者は商品が到着してから一定期間以内であれば、ほぼ無条件といっていいくらい返品が可能になっており、購入者がむちゃくちゃな理由をつけて返品したり、わざと商品に傷をつけて返品し、販売事業者側が泣き寝入りを強いられるということが非常に多いです」

 では、ユーザーがトラブルに巻き込まれないためには、どうすべきか。

「返品詐欺のような犯罪をはたらこうと考える者が意図的に取引実績を重ねて評価を高めるというケースは、それほど多くないでしょうから、まずは相手の購入者の実績がなかったり少なかったりすれば、売らないということです。メッセージのやりとりのなかで失礼な言動などがあればブロックできるので、少しやりとりをしてみて相手に怪しい点がないかを確認してみてもよいでしょう。そして何より重要なことは、盗まれて困るような高額な物をメルカリで出品するのはナンセンスだと認識し、そのような物は出品しないということです。他のアプリや実店舗での売却を検討してもよいでしょう。

 一方、購入者側としては、検討の段階で出品者とのやりとりのなかで『商品のこの部分の画像を送ってください』などと、確認を入念に行うことです。前述した真贋を見極める専用スタッフをメルカリが置くといった施策は、大きな労力とコストがかかるため、導入は難しいと思われます。よって、自分で自分の身を守るためにしっかりとしたチェックを怠らないことが重要です」

相次ぐ返品詐欺

 メルカリで返品の悪用によるトラブルとしては、当サイトが実際に被害に遭った人へ取材したところ、以下のような事例が起きている。

・新品未開封のプラモデルをメルカリに出品して購入者に商品を発送したところ、「部品が破損しているのでキャンセルしたい」との連絡を受けた。段ボールで2重に梱包するなど注意を払って送付したので破損の可能性は低いと思いメルカリ事務局に相談したが、返品に応じるよう指示され、返品に応じたところ、購入者から別物のパーツ部分がすべて抜き取られたプラモデルが送られてきた。改めて事務局に連絡し、写真付きで被害の状況を伝え、返品は受けたくないと伝えたところ、「購入者に確認したところ、返送した品に入れ間違いはないとのことなのでサポートは終了する」という返答が寄せられ、取引を強制的にキャンセルされた。一連の流れをX(旧Twitter)上で報告したところ、ネット上で事務局への批判の声が高まり、突如「メルカリのSNS担当」から「経緯の見直しおよび補償をする」とのメッセージが届いた。さらに事務局からも「販売代金の入金および購入者へ然るべき対応を検討」する旨の連絡があった。

・iPhone14を出品して購入者に送付したところ、「初期化されておらず規約違反だ」として返品対応を要求された。事前に初期化して郵送しており、その様子を写真にも収めていたことから詐欺を疑い、メルカリ事務局に相談したが、返品要求に応じるように指示された。そこで事務局に「詐欺の可能性があるが、メルカリが補償してくれるのか」と聞いたところ、「できる限りの対応をする」との回答があったことから返品を了承した。購入者から送られてきたのは別物の書籍だったため、改めて事務局に連絡したところ、「購入者が正しくiPhoneを返送したことを確認した」としてサポートを打ち切られた。

 同様の事例はSNS上でも多数報告されているが、たとえば以下のような事例だ。

・10万円のコーヒーメーカーを出品して購入者に郵送したところ、傷がついているから返品したいと要求されたが、郵送前に傷がない旨を確認していたため事務局に相談した。すると事務局から

「お客さまによる迷惑行為『商品については正確な説明を行わないこと』を確認しております」

「届いた商品が『説明や画像と異なる』場合は、取引を完了することはできません。そのため事務局といたしましても、返品・キャンセルをお受けいただきたいと考えております」

「通知から72時間経過後も、購入者に返送先住所を開示しない、または返品・キャンセルに向けた連絡がない場合は、取引をキャンセルいたします」

と、出品者のほうが迷惑行為を行っているという返答が寄せられた。結局、事務局が一方的に返品要求を認めて取引をキャンセルしたため、出品者の手元に商品は戻ってこず、盗難されたのと同じ状況になった。

(文=Business Journal編集部、協力=幅貴道/ネットショップ総研)