全国紙記者はいう。
「メルチュ社はSNSアカウントの管理・監修・運用やハッシュタグの統一などを行っていたと言っており、斎藤知事側はこれらの業務を同社に委託していないと言っているので、どちからが虚偽の説明をしていることになります。また、メルチュ社は選挙期間中は全神経を集中して斎藤陣営のSNS運用を担っていたと言っており、特別な理由がない限りは会社として無報酬でそのような行為を行う合理的な理由はないですし、もし仮に斎藤陣営が無報酬で同社に業務を行わせていたとすれば下請法違反など違法行為の疑いも出てきます。つまり今回の斎藤陣営の選挙活動をめぐって複数の違法性が疑われる事案が生じており、兵庫県の選挙管理委員会が調査を開始してしかるべきでしょう」
公職選挙法では、インターネットを利用した選挙運動を行った者に、その選挙運動の対価として報酬を支払った場合には買収罪の適用があると定められている。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。
「この会社に報酬を支払っているのであれば、公職選挙法がいう買収罪(3年以下の懲役刑や禁固刑)に該当することになります。特定の候補者の当選のために投票を得る有利な行動、すなわち選挙運動に携わる者に対して金銭などを提供した場合に公職選挙法第221条1項は買収罪を定めています。この場合、当然、報酬を支払った者には刑罰が科せられますし、たとえ、秘書、親族といった関係者が買収をし、斎藤知事自身は関わっていなくても『連座制』という制度によりその当選が無効となります。情報では、こういった会社は『勝手に』やっていたということですが、ここら辺の真相はしっかり追及していってもらいたいものです」
斎藤陣営・関係者からメルチュ社へSNS戦略の企画立案などに関する報酬支払いがあったのか否かについて、現在、兵庫県に問い合わせ中であり、回答あり次第、追記する。
今回の選挙選をめぐっては、選挙報道をリードするはずのテレビ・新聞などの主要オールドメディアに対する有権者の不信に加え、有権者がSNSから多くの情報を取得していたことが斎藤知事の当選を生んだとの解説が目立っている。
たとえば群馬県の山本一太知事は21日の記者会見で、「テレビ、新聞、雑誌など既存メディアから一方的に非難された候補者が当選したケースは、いまだかつて見たことはなかった。兵庫県民は既存メディアの報道をうのみにしなかったということで、初の現象。選挙の転換点になるのではないか」と分析した。
同様の見方はテレビ界のなかからでも出ており、フリーアナウンサーの宮根誠司は17日放送の報道番組『Mr.サンデー』(フジテレビ系)内で、「今回、私個人が思うのは、大手メディアのある意味、敗北です」「これから大手メディアが選挙戦をどう伝えていくのか、今回の兵庫県知事選で我々が突きつけられました」と発言。TBSの安住紳一郎アナウンサーは18日放送の情報番組『THE TIME,』内で「テレビ、メディアに対する批判も十分自覚しているつもりです。みなさんがテレビに物足りなさを感じている。『SNSと比べて』などなど意見があると思います」「SNSと同じようなことを今のテレビではできませんが、やはりプライベート、さらには裏を取ること、そして公平にということで信頼感がある情報をSNSと並んで選択肢として選んでもらえるように、もう一度、作業を丁寧に重ねていきたいと思います」と発言した。
このほか、テレビの選挙報道のあり方も議論の的となっている。たとえば、18日放送の情報番組『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)でコメンテーターの玉川徹氏は「既存メディアは公職選挙法に縛られる。法律で手足を縛られている。だけど、今はSNSが一つのメディアとなっているなかで、まったくここは縛られない。今回改めて斎藤さんを当選させるという方向で、これだけ大きな力を持った。既存メディアはいろいろ考えていかないといけない」と解説。これに対し元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏はX(旧Twitter)上に
「完全に逃げ。公選法も放送法もそこまで縛っていない。きちんと公平に放送すればいいだけなのに批判を恐れて極度に自主規制しているだけ」
「そもそもメディア関係者は『放送法は行政指導の根拠にならない。あくまでも放送局の自主規制、倫理的規範』と言っていたはず。それが今、放送法に縛られてSNSに反論できなかったと言い訳するメディア関係者が多い」
「放送局はなぜ極度な自主規制をやっているのか。それは政党や政治家、視聴者から文句を言われるのが面倒だから、それなら放送を控えようとなっているだけ。いよいよメディアも変わる時期だ。SNSと切磋琢磨して有権者に判断のための情報を届けるべきだ」
とポストした。