パルワールド側、印象操作&ミスリードなのか?任天堂との訴訟の報告リリース

 このタイミングでポケットペアが訴訟の状況に関するリリースを発表した理由・背景は何か。

「任天堂が提訴を発表したのが9月19日なので、そこから訴状が届いて内容を確認し、弁護士と相談するという流れを踏まえると、今くらいのタイミングになるでしょう。また、各方面から多くの問い合わせが寄せられていると思われ、個別に応じている余裕がないためリリースというかたちで公に発表したという事情もあるでしょう」(嵐田弁理士)

特許権侵害訴訟では二段階審理が一般的

 今回の損害賠償請求額である500万円は低いのではないかという声もみられる。

「一般的に特許権侵害訴訟では二段階審理という形態がとられます。訴訟を起こす時点では特許権侵害の有無が決定していないため、裁判所に支払う手数料(印紙代)を低く抑えるために損害賠償請求の金額を低く設定します。その後に裁判の進展をみて、訴えの変更を行って損害賠償請求の金額を引き上げたりするといった流れになります。

 今回のリリースにも『ゲームの差止め及び当該特許の登録日から本件訴訟の提起日までの間に生じた損害の一部を損害賠償として求めるもの』と書かれており、500万円はあくまで損害全体の一部に対する賠償という位置づけです」(嵐田弁理士)

 前述のとおり、今回のポケットペアのリリースには対象特許について「パルワールド」発売日より後ろの出願日しか記載されていない点について、同社による「ミスリード」「印象操作」ではないかという声も出ている。

「リリースには対象特許の登録番号が記載されており、特許庁の『特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)』で調べれば、すぐに原特許や分割出願の情報を確認できるので、弁理士からすると、特に違和感は感じられません。純粋に今回の訴訟対象となっている特許の番号、出願日などを記載しただけではないでしょうか」(嵐田弁理士)

ポケットペアが得た売上は多額

 パルワールドによってポケットペアが得た売上は多額に上るとみられる。ゲーム業界関係者の見解に基づき、発売後1カ月間に限って試算してみると、まずSteamではゲームタイトル開発元がSteam運営元のValveに対して支払う販売手数料は30%といわれており、単純計算でポケットペアが得る売上は

 3400円(価格)×1500万本×70%=約357億円

となる。また、サブスクリプション型のXbox(Game Pass)でのパルワールドのプレイヤーは約1000万ユーザー。ポケットペアとXbox運営元であるマイクロソフトの契約内容は不明だが、マイクロソフトのアプリストア「Microsoft Store」では開発者が得る売上高のシェアは88%とみられ、概算を把握するため仮にXbox(Game Pass)で1ユーザーの利用につきポケットペアがマイクロソフトから

 3400円×88%

を得るとした場合、「×1000万人」で約299億円となる。よって、両プラットフォームから得る売上は計656億円にも上る。

(文=Business Journal編集部、協力=嵐田亮/弁理士法人シアラシア代表弁理士)