早朝に牛丼チェーン「すき家」の24時間営業の店舗に行ったところ、店内に従業員がいるのに店が閉まっており、店舗外に貼り紙などもなかったため数時間後に本部に問い合わせたところ、勤務予定だった従業員が急に病欠となり、ワンオペ勤務となることを避けるために一時営業休止にしていたという回答が寄せられた――。少し前にあるサイト上に投稿されたこんなエピソードをめぐり、「貼り紙くらい貼って事情を説明すべき」といった声があがる一方、ワンオペ禁止の徹底ぶりに驚きの声も広まっている。かつて社会的に大きく問題視された「すき家」のワンオペ勤務は今、どうなっているのか。運営会社のゼンショーホールディングス(HD)に聞いた。
すき家の国内店舗数は1954(9月末現在)で、吉野家(1242店舗)、松屋(1065店舗)を上回り、店舗数ベースでは国内牛丼チェーンとしては圧倒的な1位。2025年3月期上期は全ての月で既存店売上高が前年同月比増となるなど、業績も好調だ。主力メニューの「牛丼 並盛」(松屋は「牛めし」)の価格を比較してみると、すき家は430円(税込/以下同)、吉野家は498円、松屋は430円となっており、大手牛丼チェーン3社のなかでは、吉野家より低価格、松屋と同額となっている。
現在は期間限定商品として「月見すきやき牛丼」(並盛690円)、「うな丼」(950円)などを販売している。
すき家といえば過去、ワンオペ勤務が社会的に大きな問題となった。2014年に深夜のワンオペ勤務をはじめとする従業員の過酷な労働実態が発覚。全国で一時閉店する店舗が相次ぎ、約2000店舗(当時)のうち最大で123店舗が店を開けられない状態に。さらに深夜のワンオペを廃止した影響で、全店の約9割を占めていた24時間営業店のうち、実に約7割の店舗が24時間営業の休止に追い込まれた。
すき家の労働環境改善に関する第三者委員会が公表した報告書によれば、ゼンショーHDは12年度以降、時間外労働などで64通にも上る是正勧告書を労働基準監督署から受け取っており、恒常的に月500時間以上働いていた社員や、2週間帰宅できなかった社員がいたことなども明らかになった。
「すき家の運営は法令違反であることはもとより社員の生命、身体、精神に危険を及ぼす重大な状況に陥っていた」
「過剰労働問題等に対する“麻痺”が社内で蔓延し、『業界・社内の常識』が『社会の非常識』であることについての認識が全く欠如していた」(共に第三者委の報告書より)
一連の問題を受けて「すき家」は14年、深夜のワンオペ廃止を宣言。複数勤務体制を確立したとみられていたが、22年にワンオペ勤務中の女性店員が店内で死亡するという事件が発生。すき家は、朝帯(5~9時)には一部店舗でワンオペ勤務を行っていると説明。不測の事態が起きた場合に備えて「ワイヤレス非常ボタン」を常時装着し、本部とすぐに連絡を取れるように指導しており、防犯カメラを設置しているとした。
「意識を失った従業員や強盗に襲われた従業員はワイヤレス非常ボタンを押すことはできませんし、防犯カメラを設置していても本部が常に数多くの店舗を監視することは不可能なので、ワンオペ勤務中の従業員が危険な状態になった際の対策として有効とはなり得ません。とりあえず“対策をやってます感”を出すためだけという印象をぬぐえません」(外食チェーン関係者)
そんな「すき家」の従業員の勤務体制をめぐる体験談が今、一部で話題となっている。冒頭の投稿によれば、ある日の朝5時台に24時間営業の店舗に行ったところ、店内には2人の従業員の姿が見えたものの店は閉まっており、本部に問い合わせたところ前述のような事情で一時休業となり、5時に勤務が終了した従業員が店内に少し残っていたという。現在、すき家ではワンオペ勤務はまだ続いているのか。ゼンショーHDに聞いた。