総合型・学校推薦型での入学者が増加傾向にあるのは偏差値的には下位の大学なのか。
「総合型選抜は2020年度入試まではAO入試、学校推薦型選抜は推薦入試と呼ばれていました。特に2010年代以前はごく少数の難関大を除けば簡単に入学できる入試であったことは事実です。そのイメージから現在の総合型選抜・学校推薦型選抜についても、簡単に入れるイメージがネットで広まっています。あわせて、偏差値の低い大学ほど、総合型選抜・学校推薦型選抜が増加しているとのイメージも強くあります。
実際は、偏差値の低い大学だけでなく、難関大でも総合型選抜・学校推薦型選抜による入学者が増加しています。
・文京学院大学(2024年・河合塾偏差値が35.0~37.5)
2024年:一般選抜164、総合型選抜379、学校推薦型選抜410/一般選抜の割合17.2%
2013年:一般入試559、AO入試205、推薦426/一般入試の割合46.9%
・武蔵大学(2024年・河合塾偏差値が52.5~60.0)
2024年:一般選抜808、総合型選抜163、学校推薦型選抜337/一般選抜の割合61.8%
2013年:一般入試494、AO入試32、推薦427/一般入試の割合51.8%
・上智大学(2024年・河合塾偏差値が55.0~65.0)
2024年:一般選抜1423、総合型選抜305、学校推薦型選抜826/一般選抜の割合55.7%
2013年:一般入試1873、AO入試0、推薦1050/一般入試の割合64.1%
※データは旺文社『大学真の実力 情報公開BOOK』2014年度版・2025年度版に記載の数値/推薦は公募型・指定校制などの合算
ためしに3校抽出し、一般選抜の経年変化をまとめました。偏差値が40を切っている文京学院大学は一般選抜(入試)による入学者の割合が46.9%→17.2%と激減しています。一方、武蔵大学は51.8%→61.8%と増加。難関の上智大学は64.1%→55.7%と減少しました。3校だけなので断定はできませんが、難関大でも一般選抜の割合は減少傾向にあります」
総合型・推薦型での入学者の増加を受け、大学に進学するということの意義・価値が低下したという指摘もみられるが、実際にそのような側面はあるのか。
「大学進学の価値に対する疑問視は、いわゆる『今どきの若い者は』論と同じです。総合型選抜・学校推薦型選抜が簡単に入れる、とのイメージから疑問視がネットではよく見受けられます。実際は、企業が面接で『一般選抜か総合型選抜・学校推薦型選抜か、どちらで入学したのか?』などと質問することはありません。企業からすれば、売り手市場でそんな質問をする余裕などありませんし、学力を見るなら適性検査を課せばいいからです。
それと、総合型選抜・学校推薦型選抜といっても、学力テストを課すものもありますし、中堅大・中堅以下の私大でも面接で口頭試問を入れるようになっています。2025年度から東洋大学が総合型選抜で学力テストを課す・併願可能なものを始めます。これにより、学力シフトの総合型選抜も今後、一定数を占めるものと思われます」
では、将来的な就職やキャリア形成の面で、大学に進学するということが必ずしもメリットが大きいことではなくなっているといえるのか。
「これも先の質問と同じです。大学進学に価値がない、ということであれば高卒就職で十分なはずです。実際は、高卒就職の割合は1990年35.2%が2023年は14.2%と激減。大学進学率は36.3%→57.7%と大幅に増加しています。このデータから、『大学進学にメリットがない』との論は俗論にすぎず、現実とは大きくかい離することを示しています」
(文=Business Journal編集部、協力=石渡嶺司/大学ジャーナリスト)