担当者クラスも年収2千万円…伊藤忠商事、モーレツ最上位“社畜”たちの生態

「かつては海外駐在の手当が厚かったため、1~2回海外駐在すると家が1軒建つといわれたが、その手当が削られてきており、その分をベースアップに回している印象を受ける」

「“ウチはまだまだ三流商社”と感じる」

 前述のとおり、伊藤忠は他の総合商社と異なり財閥グループの力に頼ることができないなかで事業を拡大させる必要があるため、かなりのハードワークだという評は以前から存在する。

「国内と比べて海外の駐在は本社の目が行き届きにくく、ときに政治的なリスクもあるなかで、よちよち歩きの事業をゼロから切り開いていかなければならなかったりするので、土日もなく働くという状況になることも珍しくない。たまに海外で総合商社の社員が身柄を拘束されるという事件が起きるが、政治的リスクの高い国だと本当に命を落としかねず、そのなかで事業を立ち上げたり拡大させていくという仕事は過酷極まりない」

「あまり治安が良くない国ではセキュリティが高い住居は限られてくるので、同じマンションに他の総合商社の人間が住んでいるというケースは珍しくないが、ウチの社員が会社からあてがわれる住戸が他社の社員の住戸の数分の1の広さしかなかったり、安全のために他社の社員は毎日ハイヤーで通勤しているのに、ウチの社員は徒歩ということもある。その意味では“ウチはまだまだ三流商社”と感じる」

「総合商社各社の社風を表す小話として、橋がかかっていない川を渡らなければならない場合、三菱商事の社員は業者を使って橋を建設して渡り、住友商事の社員は橋を建てながら徐々に渡り、伊藤忠の社員は服を脱いで泳いで渡るというものがあるが、あながち外れていない気がする。あのビッグモーターを買収するなど、他の総合商社は絶対にできない芸当で、そういう危ない橋を渡ってでもチャレンジングなことに乗り出せるのは伊藤忠の強みといえる」

体育会系出身の人が多い

 東京本社をはじめ国内拠点の社員の労働環境は、かなりホワイトになったという声が多い。

「商社なので海外とのやりとりも多いため、かつては時差の関係で深夜残業は当たり前で、海外出張から帰国して空港から会社に直行して仕事をするということもあったが、今は早朝出勤の推奨とセットで原則20時以降の勤務は禁止されており、職場関係の飲み会だけでなく社外の取引先との会食も22時以降は禁止されている。なので自ずとブラックな労働環境にはなりにくい。残業手当やタクシー代の大幅な削減で業績面で良い影響が出ており、慣れると早朝出勤のメリットを感じる社員が多いようで概ね好評」

「年功序列の伝統的な日本企業であり、今でもそうだが体育会系出身の社員が多いので、かつては職場の人の結婚式で若手連中が延々と樽酒飲みを強制されたり、上司が部下を朝まで連れまわして説教するといったこともあったが、今はそんなことをするとすぐにホットラインに通報されてハラスメントだとして問題になるので、すっかりなくなった」

 社員には、どのようなタイプの人が多いのか。

「他の商社と比べると体育会系出身の人が多く、東京大学や京都大学、大阪大学などの国立大学や早稲田大学、慶應義塾大学など上位大学で体育会に所属していたというタイプが多い。MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)出身の人も結構いるが、本当に優秀な社員は東大出身が多かったりする。商社の仕事は結局は体力勝負かつ強いメンタルを持つ人間が生き残るみたいな部分もあるので、上位大学に入れるレベルの一定程度の知的能力と強い体力の両方を兼ね備えている人物が求められることになる。加えて、当然ながら各種ビジネススキルやコミュニケーション能力、営業力など全方位の能力が求められるので、その意味では“最上位社畜”という言い方はあながち外れてはいない。