日テレ、スタジオジブリの子会社化で数百億円の売上増を達成できる可能性あり

“ジブリ×〇〇”の可能性

 数百億円の投資は、今後どう大化けするのだろうか。日テレの24年度第1四半期の決算を見ると、日テレ本体は不調である。22~23年度も日テレ本体は減収減益だった。ところがアニメ関連だけが、にわかに大幅な増収増益に転じた。最大の要因はジブリの子会社化だろう。

日テレ、スタジオジブリの子会社化で数百億円の売上増を達成できる可能性ありの画像3

 今後、放送以外でジブリを活用すれば、より大きな収益を出せるはずだ。例えば日テレは子会社のHJホールディングスを通じてSVOD事業「Hulu」を展開しているが、24年度第1四半期は減収減益だ。NetflixやU-NEXTなど競合相手がひしめくなか、苦戦を強いられている可能性がある。

 そこで国内限定でHuluがジブリ作品を配信したらどうなるか。十万単位で加入者数が増え、十億円単位の増収が見込める。今年、『千と千尋の神隠し』以来21年ぶりに『君たちはどう生きるか』が米アカデミー賞の長編アニメ賞を獲得したように、ジブリ作品は海外展開も十分可能だ。期間と作品を限定したとしても、NetflixやDisney+などから十億円単位の配信権料が得られる。いや、やり方次第では百億円単位となるかもしれない。

 ほかにもジブリパークでの新たな展開も考えられる。現状はジブリ作品の世界観を優先した空間となっているが、デジタルテクノロジーを駆使して来園者が作品のキャラクターと一緒に写る画像をつくったり、物語を追体験できるコースをつくるなど、サービスはまだまだ開発の余地がある。東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に負けない日本ならではのテーマパークに進化させれば、インバウンド需要も含めて大きなビジネスに発展するはずだ。

最大の課題はNext One

 そして今後の最大の課題は、ジブリならではの作品の制作だ。スタジオジブリの社長に日テレの役員が就任した以上、日テレの制作力も動員した新しい映画製作が視野に入っているはずだ。ただし宮崎駿監督の作風や哲学と日テレのやり方は当然違う。そこで軋轢が生じてなかなか前に進めないとなると、両者のコラボが活かせずに終わってしまう。それでも83歳の宮崎監督が今後何本も新たな作品を生み出すのは難しいはずだ。ここは新たな才能を見いだし、いかにジブリ初期の頃のように10年で10作近い映画をつくれるかだろう。

 その際に、新たな視点も求められる。優れた映画を作ることは当然だが、今後はそれ以外への配慮と努力が重要になってくる。宮崎監督は以下の「映画つくり三原則」を掲げている。

「おもしろいこと」
「作るに値すること」
「お金が儲かること」

 言い換えれば、娯楽性・普遍性・事業性だ。この事業性は今後、視聴者の届けるインフラが多様化し、視聴形態も変わってきた以上、新しいテクノロジーも動員して多様、多数の人々の興味・ニーズに合うプレゼンができるか否かで明暗が分かれる。聞くところによると、宮崎監督はデジタルを快く思っていないようだ。しかしここを乗り越えないと、“日テレ×ジブリ”の積算効果は発揮できない。ジブリアニメの新たな地平が拓かれんことを願ってやまない。

(協力=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表)