ユニクロ心斎橋店が斬新なコンセプトの店舗へとリニューアルしたのが2023年11月。それから1年もたたずに通常店舗へと再リニューアルした。そもそも、なぜ昨年、リニューアルしたのか。そしてなぜ通常店舗へと戻さなければならなかったのか。専門家の分析によると、その裏側が透けて見えてきた。
ユニクロは2023年11月23日、大阪・心斎橋エリアに「UNIQLO SHINSAIBASHI」をオープンした。同店舗は、それまで通常のユニクロ店舗として営業していた場所に、新店としてオープンさせたものだ。
ちなみに、もともとあった「ユニクロ心斎橋店」は、2004年にユニクロ発の大型店「ユニクロプラス心斎橋筋店」としてオープン、2010年にニューヨーク、ロンドン、パリ、上海に続き、世界で5番目のグローバル旗艦店「ユニクロ心斎橋店」となった。2021年8月にいったん閉店し、心斎橋筋2丁目にジーユーとの一体型店舗として店名を「ユニクロ心斎橋筋商店街店」に改めて営業を続けている。
UNIQLO SHINSAIBASHIは、国内外から多くの観光客が訪れる場所で新名所とするべく、「ダブルデラックス!」をテーマとし、関西最大級の品揃えとサービスを掲げた。派手なネオンやPOP(店頭販促)が客の目を引くほか、POPやフラッグに大阪弁でコピーを書くなど、関西圏以外の人がイメージする“コテコテの大阪らしさ”を店内に表現しており、旅行客や訪日外国人を意識した店づくりになっていた。
それが、リオープンから1年もたたずに方針転換し、通常店舗に戻した。確かにSNS上では、大阪府民を中心に「気持ち悪い」「ステレオタイプの大阪の押し売り」など不評ではあったが、ユニクロでは織り込み済みではなかったのか。明らかに外国人観光客をターゲットにした店づくりだっただけに、急速な路線変更に驚く声も多い。
アパレル業界でトレンドリサーチやコンサル事業などを手がけるココベイ社長の磯部孝氏は、次のように分析する。
「ユニクロは現在、国内に約800店舗ありますが、そもそも心斎橋店はその中でも歴史のある店舗で、昨年のリニューアルはグローバル繁盛店という位置づけとなっていました。従来は“チェーンストアマネジメント”というかたちで、ひとつのモデルパターンを全国に水平展開することが一般的でしたが、ユニクロは2014年から地域色を打ち出す戦略を取り始めました。同年に東京の吉祥寺店、御徒町店、池袋店を地域密着型の店舗にしました。これは地域住民との親和性を図っていくとともに、観光客向けに訴求する狙いがありました。この地域密着型の店舗の延長で、UNIQLO SHINSAIBASHIがリニューアルしたと考えられます。
それが1年たたずに方向転換した理由としては、個性的でありすぎたがゆえに、賛否両論を呼び込んだことが挙げられます。大阪は来年、関西万博を控えているので、これから世界中の観光客が大阪に集まってきます。その観光客を狙ってコテコテ路線の店舗づくりをした可能性が高いですが、その方向性が裏目に出た感があり、表現を控えざるを得なくなったのではないかと推測できます」
ステレオタイプな大阪のイメージだったのは、観光客向けで、地元民は構想外の店づくりだったといえるのだろうか。
「UNIQLO SHINSAIBASHIは、見方によってはドン・キホーテにそっくりでした。POPや提灯などお祭り的な雰囲気づくりは、まるでドンキです。ドンキは昨今、インバウンドを集客して成長しています。ユニクロも都心店を中心にインバウンド客を引き込んでいますが、UNIQLO SHINSAIBASHIでは、それをさらに上乗せしたいと考えていたのではないでしょうか。