西友とオーケー、なぜ毎日・安売りでも高利益率?特売が不要、人員を平準化

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西友とオーケーの公式サイトより

「毎日安売り」の「EDLP(エブリデー・ロープライス)」を掲げるスーパーマーケットの「オーケー」と「西友」。格安スーパーでありながらも、同業他社と比較して高い利益率を誇っているが、なぜ安売りでも高い水準の利益を確保できているのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 1963年(昭和38年)創業の西友はコンビニエンスストア「ファミリーマート」や日用品・雑貨店「無印良品」を生んだことでも知られている(ともに現在は他社が運営)。2002年には米国ウォルマートの傘下に入り、08年にはウォルマートの完全子会社となり上場を廃止したが、21年にウォルマートは西友株の計85%を米投資ファンドに売却。昨年にはウォルマートの基幹システムを西友独自のものに入れ替える大規模なシステム更新作業を行い、北海道と九州の店舗事業を他社に譲渡する方針を発表するなど、経営は転換期を迎えており、将来的には再上場を目指しているとされる。全国の店舗数は約250店舗であり、日用品から食品まで幅広いラインナップを取りそろえるPB(プライベートブランド)「みなさまのお墨付き」に代表される低価格がウリだ。

 オーケーの創業は西友より5年早い1958年(昭和33年)。1964年にはコンピュータによる商品管理システムを導入し、予約方式自動発注システムの導入(2003年)、自動棚割の導入(07年)など、業界に先駆けてIT化を推進。01年には特売チラシを廃止するなど、業界の常識にとらわれない取り組みも実行してきた。

「両者に共通している点は店内・自社調理の惣菜類への注力です。オーケーは322円の『ロースカツ重』、西友は低価格ながら高いクオリティのパン類が人気ですが、総菜類はスーパーの集客を左右する大きな要素の一つ。一方、違いという面では、オーケーはとにかく安くナショナルブランドの商品を仕入れて大量に陳列するのに対し、西友は自社PBを前面に押し出している印象。特にオーケーは夕方頃になるとガラ空きの陳列棚も目立つが、大量に仕入れてしっかり売り切るということを徹底している」(大手小売チェーン関係者)

西友特有の強み、オーケー特有の強み

 低価格がウリのスーパーながら、両者とも同業他社と比較して利益率は高い。23年度の売上高営業利益率をみてみると、オーケーは6.52%、西友は3.82%。これはライフコーポレーションの2.98%、イオングループのGMS事業の0.84%、イトーヨーカ堂(営業赤字)と比べても高い数字となっている。

 その理由は何なのか。流通ジャーナリストの西川立一氏はいう。

「大々的な特売やセールを必要としないEDLPのため、売り場のレイアウトを頻繁に変える必要はなく、特売やセール期に多くの人員を投入することもなく、人員や集客数も平準化できることが店舗の運用コストの低減につながっています。

 また、両者に共通しているのが、早い時期から自動発注や自動棚割といったシステム化・自動化に積極的に取り組んでいる点です。こうした業務効率向上は在庫回転率の上昇、利益率の上昇につながります」

 西友特有の強みは何か。

「ウォルマートからノウハウを吸収したマルチジョブが挙げられます。一人の従業員が品出しやレジなど複数の業務をこなすことで、人件費の抑制につなげています」(西川氏)

 オーケー特有の強みは何か。

「圧倒的なバイイングパワーとメーカーとのパイプを使って、ナショナルブランドの商品を非常に低い価格で大量に仕入れている点です。“ナショナルブランドの商品を安く買える”というのは顧客にとって大きな魅力であり、メーカーとしても大量に商品を捌けるというのはメリットが大きいです。また、スーパーにとっては事業運営・管理にかかる費用の合計である販管費をいかに抑えるかが重要ですが、オーケーの売上高販管費率は17%台(23年度)となっており、これは同業他社と比較して非常に低い値になっています」(西川氏)

イオンのGMS事業を大きく凌駕

 売上高営業利益率としては、西友とオーケーは大手スーパーの代表格であるイオンのGMS事業を大きく凌駕しているが、その差はどこから生まれるのか。

「イオンもPBの『トップバリュ』などを通じて低価格化を意識していますが、同時に高付加価値の商品の扱いにも注力しています。一方、特にオーケーはとにかく低価格路線を徹底する戦略であり、こうした違いが差を生んでいるのかもしれません」(西川氏)

(文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト)