「NISAやって後悔」の人が続出…株価急落で含み損、政府ゴリ押しに疑問も

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首相官邸の公式サイトより

 政府が普及に力を入れている新NISA(少額投資非課税制度)制度が1月からスタートしたことを契機に、投資信託や株式などへの投資を始めたという人は多いが、今月に入り日経平均株価の大幅下落や円高進行による外貨建て投資信託の値減りが起こり、証券会社には損切りすべきかどうかや運用内容の変更に関する問い合わせが多数寄せられているという。SNS上にも「やって後悔した」といった声があがり、X(旧Twitter)でも「新NISA」というキーワードがトレンド入り。NISA口座を保有している人は、何か手を打ったほうがよいのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 4月にいったん下落した日経平均株価はその後、上昇トレンドを描き、先月(7月)11日には史上最高値となる4万2224円を記録。そこから急落し、先週金曜(2日)の終値は前日比2216円63銭安の3万5909円70銭で、下げ幅は1987年10月20日のブラックマンデーに次ぐ歴代2番目の大きさとなった。

 要因の一つは日本銀行の金融緩和路線の転換だ。日銀は先月31日、金融政策決定会合で政策金利を0.25%に引き上げることを決定し、市場では追加利上げの観測も強い。一方、米国では景気減速の兆候が見え始め、米連邦準備理事会(FRB)が政策金利の利下げの可能性も示唆しており、日米金利差が縮小し、これまで輸出企業の業績を押し上げていた円安ドル高が後退するとの見方が強まっている。

 それに加え、世界ではハイテク企業への期待が薄まり、半導体関連株などを中心に株価の勢いが減退している点も影響している。

 日本を含めた世界的な株安の影響を受けているのがNISA口座を保有して投資を行っている人々だ。特に1月の新NISA開始を機に投資を始めた人のなかには、「低リスク・分散投資・長期保有」を重視して世界各国の株式で構成される外貨建て商品「オール・カントリー(オルカン)」や、TOPIXなどの指標に連動するインデックス型を購入している人も多く、株式市場全体が下降傾向になると一時的に資産が目減りすることになる。

NISA制度とは

 政府が現預金に滞留する家計金融資産を企業の成長投資に振り向ける目的で14年にスタートさせたNISAは、投資による売却益や配当金などに課される税金(20.315%)が免除されるというもの。つみたてNISAと一般NISAの併用が不可能であったり、口座開設期間や非課税保有期間が設けられていたりと制限も多かった。これの拡充版といえるのが新NISA制度。つみたてNISAは「つみたて投資枠」に、一般NISAは成長投資枠に衣替えされ、両制度の併用が可能となったほか、非課税保有限度額は合計1800万円(成長投資枠は1200万円まで)、年間投資枠は「つみたて投資枠」はそれまでの40万円から120万円に、成長投資枠は120万円から240万円に引き上げられ、非課税保有期間も無制限となった。

 投資可能な対象商品は、つみたて投資枠は一定の条件を満たす投資信託など、成長投資枠は一定の上場株式、ETF、投資信託などとなっている。

 金融庁によれば、昨年12月までの1年間でNISA用対象の証券口座数は約2割増え2136万口座(18歳以上)。日本証券業協会によれば、証券会社10社の今年2月末時点のNISA口座数は約1400万口座であり、2月のNISA口座の新規開設件数は53万件で前年1~3月の1カ月平均の増加数と比較して約2.9倍。NISA口座開設件数でトップ(23年)のSBI証券では毎月100円からの投資も可能で、国内株式や投資信託の売買手数料は無料で、投資信託の取扱本数は2600本以上、米国株式の取扱銘柄数は5400以上となっている。