このため銀行界はかねて、米欧勢との公平な競争条件確保の必要性を唱えて規制見直しを要求。これに応じて段階的に緩和されてきた経緯がある。22年には、上場企業に限って一定条件下で情報共有の事前同意が不要となり、次は中小企業や個人にも緩和対象を広げるかが焦点となっている。
ただ、メガバンクが絡むFW規制違反は、22年に行政処分を受けたSMBC日興証券と三井住友銀行との間の案件に続くもの。今回も「乱用」は認定されなかったとはいえ、銀行系グループの勢力拡大を警戒し規制緩和に抵抗してきた証券界からの反発は強い。日本証券業協会の森田敏夫会長(野村証券出身)は「より明確なルールを示すことも必要では」と規制の厳格化を主張する。
米国ではFW規制がない半面、銀行は顧客と個別に守秘義務契約を結び、違反すれば多額の賠償を請求されるリスクがあるため「抑止力」として働いている。日本の場合、違反しても行政処分にとどまることもあり、「罰則をもっと強くすべきだ」(巽大介光世証券社長)との声も上がる。
これに対し、全国銀行協会の福留朗裕会長(三井住友銀頭取)は今月18日の会見で、国が掲げる「資産運用立国」の実現に向け、「中堅・中小企業にも個人にも、隅々まで証券サービスを提供することが重要だ」と力説。「引き続き緩和を求める」と明言した。
法令順守は大前提ながら、銀証間や国内外間の顧客の橋渡しが制約されることで利便性低下を招き、「規制自体が弊害を生んでいる」(銀行関係者)との思いは業界内に根強い。
政府は6月に決定した経済財政運営の基本指針「骨太の方針」に「銀証FW規制の在り方について検討を行う」と明記した。顧客ニーズが多様化しグローバル競争も進む中、検討に際しては実態に即した適切な規制のバランスをどう取るかが問われる。(経済部・岩田馨)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/07/25-14:53)