丸亀製麺を誹謗中傷する動画がインターネット上に投稿され、大きな話題となっている。さらに、その動画が丸亀製麺の要請を受けて削除されたとみられることから、「逆にやましいことがあるように見える」などとして、かえって関心を集める事態となった。「(丸亀製麺は)ビームを放てる」「黒魔術を使う」など、明らかな冗談とわかる内容も含まれるものの、動画全体として同社を煽るような動画となっている。弁護士は、「名誉毀損に該当する動画」と断じる。
6月下旬、インターネット上に丸亀製麵MAD動画が投稿された。MAD動画とは、既存の動画や音声、画像などを、他人が勝手に加工・編集して再構成した動画を指す。単にMADともいわれる。今回話題になった動画は、丸亀製麺の公式CMをベースにつくられており、同社の著作権も侵害しているものといえる。たとえば、オリジナル動画には「丸亀製麺は一軒一軒が製麺所。麺職人たちが日々、技と感性を磨いている」というテロップやナレーションがあるが、それを「丸亀製麺は口からビームを放つ。それだけではない。丸亀製麺は時を止めることができる特殊なストップウォッチを持っている」などと改変している。
この程度の改変であれば、まだ笑って済ませるが、問題はその後だ。「夥しい量の大麻吸ってる」「決して入ってはならない拷問部屋がある」「池の水からうどん作ってる」「5人の従業員が犠牲になってる」「しばしば黒魔術使う」「裏社会と繋がってる」などと誹謗中傷が続く。さらには、「丸亀製麺は労働基準法が適用されない」と、過去の労働問題を揶揄したかのような表現も出てくる。
丸亀製麺に関しては、元店長の男性が2019年に過重労働が原因でうつ病を発症し、2020年に労災認定された事例がある。その際、男性は勤務記録上「休憩」となっている時間にも労働していたと主張し、物議を醸した。
この動画が公開されると、ネット上で瞬く間に拡散された。「面白いが誹謗中傷がひどい」「ネタに織り交ぜて誹謗中傷している」など、あまりにも悪意がありすぎると指摘する声が続出した。
ネット上で注目度が高まるなか、「権利者の申し立てにより削除されました」との表示とともに非公開とされ、さらに関心を集めることになった。なかには、「これ丸亀製麺がわざわざ著作権者申し立てで消したの逆にやましいことがあるみたいで滅茶苦茶おもろい」など、動画削除を要請したのは悪手だと指摘する向きもある。
確かに、昨今のインターネットでは、一度注目された動画や画像は、削除するとかえって注目度が高まったり、複製された動画が拡散されることもよくある。とはいえ、名誉毀損や業務妨害等、違法な内容といえるものであれば、野放しにしておくわけにもいかない。ちなみに今回の丸亀製麵MAD動画について、山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は「明らかな名誉毀損」と断言する。
「冗談で済まされる内容ではありません。特に、
・全ての店でハイになる違法な粉からつくる
・池の水からうどん作ってる
・裏社会と繋がっている
・闇オークションに出品し私腹を肥やしている
・不眠不休で働かされる
・削りとった皮膚の粉からつくる
など、全てが名誉毀損表現です。
投稿した人物を特定し、損害賠償請求をすれば間違いなく名誉毀損が成立します。あまり考えられませんが、もしこの動画を信じるなど人が多数いて、動画投稿の前後に売上、客足が減ったことがあれば相当の額の損害賠償が認められることでしょう。
こういったネットの中にいるアホは現実社会に引きずり出して、裁判という社会の制裁を厳しく加えるべきです」
とりあえず元動画は削除されたが、その複製動画が拡散される状況は続いている。それらを投稿・拡散した者も含め、違法行為に加担していることを自覚すべきだろう。今のところ、丸亀製麺が法的措置を講じるといった動きはみられないが、仮に裁判を起こされたら、莫大な損害賠償の責を負う可能性もある。
(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)