なぜマクドナルドは頑なにトマトを使わないのか?複雑かつ奥深い理由

 その点、マクドナルドのハンバーガーのアイデンティティは、牛肉100%の『肉肉しい』パティそのものにあります。ですので、トマトのような扱いづらい食材をあえて無理して使う必要性は、他社に比べて薄いといえます。原価及び品質がブレないことを優先するほうが正しい経営判断といえるでしょう。ちなみにマクドナルドの場合、レタスも、細かくカットされた状態で使われます。ボロボロ溢れて食べづらいという意見があるのも百も承知だとは思いますが、これによって歩留まりも良くなり、品質も均一化しやすくなります。

 個人的には、マックの魅力は牛肉そのもののワイルドな旨味をシンプル・ダイレクトに楽しめる点だと考えています。その点でいうと、トマトはその味わいを薄めてしまいかねないともいえます。余談ですが、私自身はマックのベーシックなハンバーガーに限っていえば、トマトやレタスが入らないシンプルさはむしろ長所だと考えていますし、牛肉のおいしさをストレートに楽しむために、ケチャップすらもいつも抜いてもらっています」

 別の飲食チェーン関係者はいう。

「マクドナルドがトマトを使わない理由を一言でいえば『デメリットが多すぎる』という点に尽きるだろう。トマトは割高なうえにカットすると汁が出るので扱いが難しく、バンズに挟んでペーパーで包むとバーガー全体が水っぽくなってしまったり、ペーパーにしみてべちゃべちゃになってしまう恐れもある。1個のトマトのうちで輪切りにして使える部分は限られており、廃棄ロスも増える。ロスを減らすために細かく切って使うのも難しく、ペースト状にして生っぽいトマトソースにするという手もあるが、手間がかかる。つまりトマトを使うと価格アップにつながるため、リーズナブルな価格をウリとするマクドナルドとしてはトマトは使用しないという判断をしているのだろう。

 もっとも、今のマックのメイン客層がバーガーにトマトを入れることを求めているとは考えにくく、逆に価格据え置きで『てりやきマックバーガー』や『ビッグマック』『チーズバーガー』など定番メニューにトマトを入れたとしても、お客から拒否反応が出るのは必至だろう」

(文=Business Journal編集部、協力=稲田俊輔/「エリックサウス」総料理長)