大手ハンバーガーチェーンのマクドナルドは、なぜ頑なにバーガーの中にトマトを入れないのか、という疑問が一部で話題となっている。競合するモスバーガーやバーガーキングは主力メニューに生のトマトを使用しているが、マクドナルドがそのような姿勢を貫いているのには何か理由があるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
全国約3000店を展開するマクドナルドは、モスバーガー(約1300店)、ロッテリア(約300店)、バーガーキング(約200店)を大きく引き離し、店舗数ベースでは圧倒的な業界1位となっている。
原材料価格・エネルギーコストの上昇を受け外食業界で値上げが続くなか、マクドナルドは2022年3月と9月、昨年1月と7月、今年1月と2年のうちに5度も値上げを実施。昨年7月の価格改定では「通常店」「準都心店」「都心店」で異なる価格設定がなされたことも注目された。今年1月の値上げの対象になったメニューは全体の約3分の1で、主なメニューの値上げ幅は次の通り(以下、税込み。都心部の店舗などでは価格は異なる)
・ビッグマック:450円→480円
・てりやきマックバーガー:370円→400円
・フィレオフィッシュ:370円→400円
・チキンフィレオ:380円→410円
・ダブルチーズバーガー:400円→430円
・えびフィレオ:400円→430円
・エッグマックマフィン:240円→260円
・ソーセージエッグマフィン:290円→320円
・マックグリドル ソーセージ:230円→250円
・チキンマックナゲット5ピース:240円→260円
・チキンマックナゲット15ピース:710円→740円
・炭酸ドリンク Lサイズ:270円→290円
・カフェラテ(ホット・アイス)Sサイズ:190円→210円、Mサイズ:250円→280円
マクドナルドといえば競合チェーンと比較して割安な価格がウリの一つだ。例えば「ハンバーガー」は170円であり、モスバーガーの「モスバーガー」440円、「ハンバーガー」240円、ロッテリアの「ハンバーガー」220円、バーガーキングの「ワッパー」590円、「ワッパーJr.」400円よりも低く価格が設定されている。
商品の特徴といえば、トマトが使用されていない点が挙げられる。各チェーンの代表的メニューを見てみると、モスバーガーの「モスバーガー」、バーガーキングの「ワッパー」には輪切りのトマトが使用されているが、現在マクドナルドが提供するバーガー類でトマトが使用されているのは「炙り醤油風 ベーコントマト肉厚ビーフ」570円のみとなっている。
マクドナルドがあえてトマトを使用しない理由は何なのか。また、一般的に飲食店において、料理にトマトを使用することに何かハードルや難点などはあるものなのか。飲食プロデューサーで南インド料理専門店「エリックサウス」総料理長の稲田俊輔氏はいう。
「トマトはとても身近で老若男女問わず好まれやすい野菜ですが、価格としては決して安いものではありません。また時期によって価格が大きく変動するだけでなく、品質もブレやすいという厄介さがあります。サラダの彩りとして入るくらいならまだしも、主力の料理に使うには味の面でも原価の面でも、それなりのリスクがあります。
ハンバーガーの場合、輪切りの形で使うので、どうしても歩留まりが悪くなりますし、ヘタ近くと真ん中ではやはり品質にバラつきが生じます。なので飲食店、特に多店舗展開するチェーン店では、トマトは扱いづらい食材ということになります。もちろんその条件自体はハンバーガーチェーン各社同じことですが、モスバーガーの旗艦商品である『モスバーガー』はそのトマトこそがアイデンティティでもあり、どれだけ経営リソースを割かれたとしても、それを出し続ける使命があります。バーガーキングもやはり、フレッシュな野菜がたっぷりと使われた『ワッパー』からトマトを抜くわけにはいきません。