キャリア官僚の合格者、東大の出身が1割以下…国家公務員にMARCH日東駒専

ーー以下、再掲載ーー

 中央省庁のキャリア官僚である国家公務員総合職。東京大学出身者が減少傾向をたどって久しいが、2023年度春の採用試験合格者数で一段と拍車がかかった。東大の合格者数(193人)は大学別ではトップだったが、前年度比24人減少。総合職試験が始まった12年度以降最少を記録し、しかも合格者数が初めて200人を下回った。12年度以降の最多合格者数は15年度の459人で、この10年で半分以下に減ったのである。

 合格者数の2位以下は、京都大学118人、北海道大学97人、早稲田大学96人、立命館大学78人、東北大学70人。私立大学出身者は634人(31.3%)で、前年の531人(28.4%)から103人増えた。私大出身者の増加を反映して、出身学校数は過去最多の170校で前年度から11校増えた。競争率は過去最低の7.1倍だった。

 東大出身者が減って私大出身者が増える傾向は、人材の質が低下したと見ればよいのか。それとも人材が多様化したと肯定的に見ればよいのか。たとえば3月1日付集英社オンライン記事『“東大生の官僚離れ”が加速…早慶の学生にも避けられ、厚労省若手キャリアの半数がMARCH卒レベル? 「過酷すぎる労働時間」「ヒラメ幹部に嫌気」「スキルが学べない」のは本当か?』によれば、厚生労働省にキャリア官僚として入省する内定者の半数がMARCH(明治大・青山学院大・立教大・中央大・法政大)レベルの卒業生となっているという。記事内では「聞いたことがない大学の卒業生も入ってきている」という同省官僚のコメントも紹介されている。

「出身大学の偏差値が変わったことは、あまり人材の質に関係がないと思う」

 そう指摘する厚生労働省出身の中野雅至神戸学院大学教授(行政学)が着目するのは競争率である。

「試験問題のレベルは維持されていると思うので、競争率が下がれば合格しやすくなる分、人材の質は下がってしまう。競争率のほうが重要なポイントである。どんな試験でも重要なのは倍率で、人口減少の影響もあるとはいえ、志願者数が減れば競争率が下がるため、人材の質は下がってしまう」

官僚が求められる能力に変化

 何をもって人材の質と評価するかは職業によって異なるが、国家公務員は近年、人事評価のあり方が変わったという。

「国家公務員試験で試しているのは基本的に問題処理能力である。知識の量や思考の柔らかさが必要なので、それも試してはいるが、比重的にいえば、与えられた時間で、正確に問題を解けるかどうかを見るのが大きいのではないか。その意味では、大学受験の能力とさほど変わらない。入省後の昇進は、90年代に政治主導体制が築かれる以前は、国家公務員試験の成績や出身大学、OBを含めた仲間内の評判などによって決定されてきたが、内閣人事局に典型的に見られるように、政治主導体制になってからは、政治への対応が求められることもあり、ポジションが上になればなるほど、求められる能力が大きく変わってきている。局長クラスになれば、政局や社会の先行きを見通す力、政治からの指示などに対して冷静な対応ができるかどうかなど、ペーパーテストで試されるような知識や事務処理能力以外の能力が重視されるようになった」(中野氏)

 人事評価にはこんな一面もある。ある厚労省キャリアOBが自らの経験を打ち明けてくれた。このOBは内閣府に出向した期間に受けた評価はAランクだったが、厚労省に復帰したらCランクの評価が付けられた。

「内閣府では評価されたのに厚労省での評価が低かったのは、国益にかなった仕事をしたけど、その仕事が厚労省の省益にマイナスだったからだ。こういう矛盾があるから、各省庁からの出向者は腰を据えずに、所属省庁を向いて仕事をするようになってしまう」