公立校教員に残業代は支給されないが、その代わりに月給の4%相当を上乗せして支給する制度「教職調整額」。これをめぐり13日放送のNHKのニュース番組が「定額働かせ放題、どれだけ残業しても一定の上乗せ分しか支払われない」と報道したことについて、文部科学省は17日付で「中教審の議論の内容に触れない一面的な報道」とする抗議文をHP上に掲載。現場の教員からは文科省の見解に対し「そもそも文科省は現場の教員の労働実態を把握していない」「事実として教師は働かされ放題になっている」などと批判の声が寄せられている。
教員給与特別措置法(給特法)では、公立校教員の給与について月給の4%相当の「教職調整額」を上乗せして支給すること、残業時間の上限について月45時間、年360時間とすることが定められている。30代の公立中学校教員はいう。
「毎週土日に部活動の指導を1日3~4時間ずつやると、それだけで少なくみてもひと月に24時間。平日は朝7時30分には勤務を開始して、部活動の指導と校務分掌(教師間で分担する校内の各種業務)、クラス担任業務、校内行事の準備などをこなして夜8時にいったん学校を出るので、朝と夕方以降を合わせて一日あたり約4時間の残業、月間で計80時間。さらに帰宅後に取り組む授業の準備の時間が加わる。なので実質的な月の残業時間は100時間を超えます。
土日の部活動指導については、わずかな日当が出るものの事実上のタダ働きで、地区や学校によっては日当を請求しないようにしているところもある。勤務時間についても超過が目立つと教育委員会から問題視されて報告書を提出しなければならなくなるので、過少報告するという行為は広く行われています。その結果、表面上は『教員は長時間残業をしていない』ことにされてしまうため、文科省は実態を把握できていません。自治体は給特法があるおかげで教員をいくら働かせても残業代を払う必要がないので、教員は働かされ放題になっているのです」
公立小学校・中学校の教員の長時間労働は深刻だ。2021年に名古屋大学の内田良教授らが全国の公立小学校の教員466名、公立中学校の教員458名を対象に行った調査によれば、1カ月の平均残業時間は100時間以上におよぶという。また連合総研が22年に発表した報告によれば、教員の勤務日の労働時間は平均12時間7分で、週休日の労働時間を合わせると1カ月の労働時間は293時間46分であり、時間外勤務は上限時間の月45時間を上回り、さらに過労死ラインを超えているとしている。
こうした実態は教員志望者、なり手の減少を招いている。23年度の公立学校教員採用選考試験では小学校教員の競争率(採用倍率)は2.3倍と過去最低を更新、中学校は4.3倍で1991年度の過去最低倍率と0.1ポイントの差となった。採用倍率には地域差もみられるが、東京都教育委員会が実施した24年度の小学校の教員採用選考は1.1倍と過去最低。受験者数は10年前より半減しており、教員を志望する人の減少は顕著だ。
昨年には東京都内の公立小学校で教員が育休を取得することになり、副校長が代わりの教員を探すために教員免許を持つ人など400人以上に電話をかけ続けたが、代わりの教員を確保できず、結局、非正規の教員にお願いして契約を延長してもらったものの、その直後に別の教員が体調不良で休職になったという出来事がニュースにも取り上げられ注目された(5月6日付読売新聞記事より)。