深刻な教員不足を受け処遇改善策や残業削減策などを検討していた文科省の中央教育審議会は13日、教職調整額を現行の4%から10%以上に引き上げることや、11時間程度の勤務間インターバル(終業から次の勤務開始まで一定の時間を空ける制度)の導入などを盛り込んだ提言をまとめ、盛山正仁文科相に提出。文科省は来年の通常国会に給特法改正案を提出する方針だが、NHK番組は一連の動きをめぐる報道のなかで公立校教員の給与体系について「定額働かせ放題」だと表現。これに文科省が抗議するという事態が生じている。
この文科省の抗議に対し、SNS上では“抗議”の声が続出しているが30代・公立中学校教師はいう。
「もし仮に日本中の学校が教員の勤務時間を正確に報告したら大変なことになるでしょうが、各自治体の公立校教員の世界は教育委員会をトップとする狭い村社会。校長以下、現場の教師たちは混乱を招いたり問題を起こして教育委員会から目をつけられたりするとやっていけなくなるので、多くの学校が横並びの精神で教員の残業時間を過少報告しています。その“公式”データだけに基づけば『働かせ放題ではない』ということになるので、文科省はそう言っているのでしょうが、非常に絶望的な気分にさせられます。この文科省の基本的な姿勢こそが教育現場の疲弊と深刻な教員不足を招いています」
40代・公立中学校教師はいう。
「教職調整額が10%ということは、これを残業代とみなすと一日8時間勤務で月20日、計160時間のうちの10%なので単純計算で16時間分ということになりますが、これでは土日の部活指導分を除いた1週間分の残業代にも及びません。また、事実上、残業代が定額制のままであれば、実際の残業時間が給与に反映されず、その一方で、やらならければならない業務量が減るわけでもないので従来どおり長時間の残業をせざるを得ず、まったく意味がありません。現場の感覚からすると、文科省は現在の教師の過酷な労働環境という問題に対して何もしていない、というのが実態です。
業務量が変わらないなか、かつて大量に採用された教員が毎年、大量に定年退職し、さらに心身不調による休職者や退職者が相次ぐ一方、新たな教員の志望者は減っているわけなので、いつかは火を噴くでしょう。いきつくところまでいきついて大きな問題が続出するような事態にならない限り、文科省が本気になって動くことはないかもしれません。教師が授業もやり、各種行事の準備や校内の細々とした業務もやり、生徒同士のトラブル対応や保護者対応もやり、部活動指導もやり、さらに教育委員会への報告書類も作成するというのは無理があります。国が法律で教師の仕事内容を限定して、部活動指導などをはじめとする授業以外の業務を極力、他の担当者がやるように業務分担を進めるという抜本的な改革をしない限り、労働環境の改善は無理だと思います」
教育現場の独特な慣習も教員の負荷を増長させている。少し前にはある学校教師がSNS上に「1年目で担任ってやっぱしんどすぎる…大学卒業して何もわからないのに、生徒指導、電話対応、事務作業、教材研究、会議、保護者対応ともうすることがたくさんすぎる」と投稿し、大きな反響を呼んだ。
このほか、修学旅行に際し事前に教員が7~8万円を徴収されるケースもある。当サイトは23年6月10日付け記事でその実態を報じていたが、以下に再掲載する。
――以下、再掲載――
中学校の修学旅行に随行する教員が個人で一人当たり8万円もの支払いを余儀なくされる――。そんなTwitter投稿が議論を呼んでいる。業務としての出張、しかも修学旅行の随行ともなれば早朝から深夜の対応に至るまで、教員は連日にわたり事実上24時間勤務が強いられるといっても過言ではないが、果たして個人の費用負担となっているというのは事実なのか――。関係者に取材した。