NHK、将来的に「全スマホ保有者からネット視聴料を徴収」か…月額1100円

NHKにとっての至上命題

 NHKの危機感は強い。NHK受信料収入は2020年度には年7000億円を割り込み、テレビを持たない世帯の増加も影響して今後も右肩下がりになると予想されている。そのため、昨年4月からは、期限内(受信機設置の翌々月の末日)に受信契約を締結しなかったり、不正に受信料を支払わない人に対し、本来の受信料の2倍の割増金を課す制度を開始。より広くかつ確実に受信料を徴収する動きを加速させているNHKが、将来的にスマホやPCを持っているすべての人から視聴料を徴収することになるとの見方もある。

 前出・水島氏はいう。

「日々ニュースはチェックしているけどテレビでは見ないという人や、ドラマもネットの『TVer(ティーバー)』で視聴するという人が増えるなか、『家にテレビがあれば料金を徴収しますよ』という形態は、いつかは見直さざるを得なくなります。そのようななかで、NHKが将来、テレビを保有しているかどうかにかかわらず、より広く受信料を徴収するようになるのではないか、ということは、放送界の誰もが考えているでしょう」

 民放キー局関係者はいう。

「いくら受信料収入が下がっているとはいえ、法律で定められた受信料制度のおかげでNHKには何もしなくても毎年6000億円以上ものお金が転がり込んでくるわけで、グループの連結剰余金残高は5000億円もある。NHK自身が認めているとおり、受信料は『視聴の対価』ではなく組織運営のための『特殊な負担金』であり、巨大な組織を存続するために国民からできるだけ広くお金を徴収していくというのがNHKにとっての至上命題だ。

 なのでネット視聴料も最初はスマホにアプリをダウンロードした人からのみ徴収するというかたちにしておき、将来的にはテレビの受信料と同様の考え方でスマホを所有していれば視聴料を取りますよという流れになってくるのは目に見えている。『テレビ視聴者が減って地上放送の受信料が減っており、公共放送機関としてのNHKの組織を維持していくためにはスマホを持つすべての人から料金を徴収する必要がある』などと、あの手この手でロジックを持ち出してくるだろう」

民間放送事業者に対するNHKの協力義務の強化

 前述のとおりネット配信はテレビ業界も注力している領域であり、NHKは民業圧迫との批判を回避するために巧妙に手を打っている様子もうかがえる。今回の改正放送法には「民間放送事業者が行う放送の難視聴解消措置に対するNHKの協力義務の強化」も盛り込まれている。

<NHKによる放送全体の発展に貢献するプラットフォームとしての役割を果たす観点から、NHKに対し、民間放送事業者から中継局の共同利用等の難視聴解消措置についてNHKとの協力に関する協議の求めがあった場合に当該協議に応じることを義務付ける>(総務省「放送法の一部を改正する法律案の概要」より)

 NHKは昨年10月に発表した「NHK経営計画24~26年度」(案)で、NHKと民放の二元体制維持のための予算として3年間で600億円を計上。昨年6月には、苦境に陥るローカル局に対して総務省とNHK・民放が一体となって救済に動く「放送法及び電波法の一部を改正する法律」が公布されており、同月の総務省発表資料「現状と課題」には、中継局の共同利用について次のように書いてある。

「将来的な経営形態の合理化も見据え、現在の地上テレビ局が、中継局の保有・運用・維持管理を担うハード事業者(共同利用会社)の利用を可能とする。(NHKと民放の連携も想定)NHKが、自らの設備だけでなく、子会社であるハード会社の設備を用いることを可能とする」