世間の想像どおり外資系金融はやはり激務なのか。
「私が扱っていた商品の営業部は朝6時30分には全員出社していた。私は営業担当だったが外回りというのは一切なく、常にどこかの国のマーケットが動いているので、デスクに備えられた4~5枚ほどのディスプレイを常に確認しながら顧客や社内のディーラーなどとやりとりしていた。朝が早い分、日付が変わる時間帯までオフィスに残っているということは少なかったが、レポート作成など残った業務をこなすために土日も出社していた。
一方、投資銀行部門は9時頃出社して深夜の2~3時頃まで働くというのが普通。なので肉体的な面でいえば投資銀行部門のほうが激務といえるのかもしれないが、マーケット部門は早朝から夜まで何時間もマーケットの動きを注視し続け、ボタン一つ押し間違えただけで多額の損失を生んで己のクビが飛ぶこともあるので、メンタル的な疲労はハンパない。また、チームプレイゆえにチームでミス発生を防ぎやすい投資銀行部門と比べて、マーケット部門は個人の裁量による仕事が多く、その分、個人が背負う責任も大きいので、これが激務ではないとはいえないだろう」
「同じマーケット部門でも勤務時間は人によってさまざま。私は自己勘定取引のディーラーで“儲けさえすればよかった”ので、朝9時とか日によっては昼前に出社して夜10時くらいに退社する感じだった。ウェリントン市場(ニュージーランド)が開くのに合わせて朝4時に出社して昼過ぎに退社するディーラーもいれば、朝6時に出社して18時頃に退社するディーラーもいるなど、担当する業務によって違ってくる。一方、投資銀行部門の人間は毎朝9時に出社して深夜の2時、3時まで働くという感じで、労働時間という点では投資銀行部門のほうが長い」
「米国系の会社だからということもあるのかもしれないが、意外にプライベートを優先した働き方ができる。家族の誕生日や子供の保育園のお迎えという理由で17時過ぎに退社するというケースも普通で、1週間くらいの休暇を年に2回取得できるなど、休みをとりやすい文化もある」
どの外資系投資銀行も解雇の面では社員にとってはシビアなようだ。
「一つの部署は各国の拠点にまたがっており、個人のパフォーマンスは東京だけでなくニューヨークやロンドンにいる複数のメンバーから評価される。そこで数字的な実績も加味されつつ『彼にはもう仕事を任せられない』と評価されれば解雇となる。解雇が言い渡されると、すぐに段ボールに私物を入れてオフィスを出なければならない。それすらも許されずに即退出を命令されて、私物は後日、自宅へ郵送されるケースもある」
「毎年、全社員のうちパフォーマンスの低い下位5~10%の人は自動的にクビになるので、クビは日常的な風景の一つとなっており、誰も驚きもしないし珍しいものではない」
「まず米国本社が『今期は世界でいくら売上・利益をあげる』と決め、それが各国法人→部署→個人に振り分けられる。業務にもよるが一人当たりの予算(目標数値)は数億円レベルになることはザラで、その期に数字ができていないと自分でもわかるし、上司から『あと半年でこの数字ができなければクビ』と明確に言われることもあるので、クビになるときはある程度、覚悟ができている」
「たとえばアベノミクスの頃は債券市場がまったく動かず、金融機関の間ではトレーディング部門を縮小する動きがみられたが、外資系の場合は人員を他部署へ異動するといったかたちではなく、当該部門の人員解雇という流れになるので、国の政策という外的要因によってクビになるというケースもある」