では、なぜミスドは告知なしで一部店舗のみで「ひっそり」と食べ放題サービスを実施しているのだろうか。
「1回の注文で数個だけ購入してもらうよりも、1800円払ってもらったほうが効率良く客単価を上げられるし、その金額でも十分に儲けが出るからだろう。一人客で食べ放題を注文する人は少なく、複数人グループでの来店も見込めるし、食べ盛りの学生層に足を運んでもらうきっかけにもなるかもしれない。ただ、常に席が埋まっているような混雑率の高い店だと回転率が下がるなどのデメリットが生じてしまうので、実施店舗を絞っているのではないか」(外食チェーン関係者)
一般的に食べ放題サービスというのは顧客が得するというイメージが多いが、実際には得をする=元が取れるというケースは少ないのか。また、店側としては儲けが出るように料理構成や価格設定を工夫しているものなのか。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏はいう。
「食べ放題というのは『なんかお得』というイメージがあり、飲食店もそこをウリにしていますが、実際には客側が得をする=元が取れるというケースは少なく、『得した気分』になってもらえるよう用意周到に準備されています。店側として損をせず、ちゃんと儲けが出るように料理構成や価格設定が考えられています。
そこで大事なのは平均値です。日常において人はどれくらい食べるのかを考えてみましょう。たとえば『いきなり!ステーキ』で注文が多いボリュームは300グラムだといわれています。飲食店のハンバーグは一食あたり約200グラムで、これに副菜やライスがついて350~400グラムです。つまり500グラムも食べれば、かなりお腹いっぱいになります。ホテルのビュッフェでいろいろと盛り合わせたお皿を2枚分食べればランチ2食分で、お腹はパンパンになりますが、この状態で800グラムといったところです。
以上より、食べ放題で人はどれだけ食べるのかと聞かれれば、600~800グラムを平均値としてみておけばいいと思います。なので、お店は800グラムをベースに使用する食材を考えます。100グラム100円の食材で料理をつくるなら、800グラムで800円。飲食店の原価率を30%くらいとして、食べ放題の価格を約3.3倍の2600円にしておけば利益を確保できます。仮に価格を5000円にすれば、もっといい食材を使用できますし、1800円くらいにするならカレーやパスタなど炭水化物や、お腹にどっしりくる揚げ物中心の料理構成となることでしょう。すべての食材が同じ単価ではないので、うまくミックスして平均コストを調整します。お客側もいろいろ食べてみたいでしょうから、お互いのニーズはかみ合うはずです。
ちなみに、800グラムで原価率30%の想定で価格設定している場合、その3.3倍、約2.6キロ食べれば本当の意味で『元が取れた』といえるかもしれませんが、普通の人にとっては無理があります。食べ放題は損得を考えるより、『いろいろな料理をいっぱい食べられて幸せ』と楽しむことをおススメします」
(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)