起業コストが劇的に低下した日本で起業ブームが起きない理由…今、成功する領域

 このあたりは10~20年前と比べると、格段に変化していると考えられます」(同)

失敗が許されない日本で成功することは難しい?

 実際に起業した後に割に合うような収入を確保できるかも気になるポイントだ。特にAI・DXの分野では人材の報酬も上昇しているという背景もあるため、起業するメリットが少ない場合も考えられないだろうか。

「将来、人を雇うことを見越して起業をする人は多くはありません。それは、日本は失敗が許されない国だからです。資金確保にはエンジェル投資家からの出資や、ベンチャーキャピタルからの資金調達という手法がありますが、欧米と比べると難しいといえます。そんな背景もあり、起業に対して肯定的なイメージを持っている日本人の割合は欧米の半分以下になっています。

 一方で、なぜAI・DX人材に需要が高まっているかというと、背景には労働人口の減少があります。解決策としては子供を増やすことが考えられますが、効果が出たとしても早くて20年はかかってしまいます。移民という方法も考えられますが、日本では受け入れられにくいでしょう。現実的な解決策としては、AI・DXを活用した生産性の向上ということになるでしょう。であれば、この分野にチャレンジする起業であれば割に合う可能性は上がるかもしれません」(同)

 では実際に起業するのであれば、事前に注意しておくポイントとしては、何が挙げられるのだろうか。

「失敗が許されない日本なので、過去のお金のトラブルには気を付けたほうが良いですね。お金以外にも、例えば、運転免許の失効を何度もやっていると、その記録を見てお金が借りられない場合があります。過去の失敗が、資金調達を困難にさせる場合があるため、起業を予定している場合は、借り入れや支払いについて日ごろから気を付けたほうがいいでしょう。

 また、周りに流されずに自分の頭で考えて業種を選択したほうがいいです。『何が儲かりますか?』と聞いてくるような人は、成功するのは難しいでしょうし、みんながそっちに行くから自分もそっちに行こうとすると、レッドオーシャンに巻き込まれて失敗してしまいます。ほかの人がやっていないジャンルで、自分なりに先を読んでジャンル選びをしたほうがいいでしょうね」(同)

レッドオーシャンといわれるITビジネスで起業を成功させるには?

 すでにITビジネスはレッドオーシャンとなり、この分野で起業しても成功は難しいという意見もあるが、それでもITビジネスで起業を成功させるためには、どのような業種を選べば失敗しにくいのだろうか。

「どの企業も労働人口の減少に対して危機感を持っています。人手不足という大きな課題を解決してくれるビジネスであれば、まだまだ勝機はあるだろうと考えています。ただ既存の業務をシステム化するだけでは、他社との差別化は難しいでしょう。ChatGPTによる文章の自動生成や、Midjourneyによる画像生成など、AIの機能を活用した仕組みで、今までにない提案ができる企業は重宝されると考えられます。そして、言われたことをプログラムにできるだけでなく、RPA(ソフトウェアロボット技術)を活用して、事務作業を自動化できる人材も必要となってくるでしょう」(同)

(文=LUIS FIELD、協力=中野裕哲/V-Spiritsグループ代表)