近年はSNSの発達により、誰でも情報を発信できるようになり、ユーザーの文章力も向上しました。しっかりと自分の考えを論理的に組み立て、建設的なコメントを残すと賛同を得られやすく、インプレッションも稼ぎやすい。ですから、結果的に批判的なコメントを目にする機会が多くなってしまっているのかもしれません」(同)
しかしながら、Yahoo!ニュースではコメントの偏りが出ないように工夫もされているそうだ。
「批判的なコメントだけではなく、その反対意見、要するに賛同意見などもAIのマッピングを利用して取り入れるようにしています。なるべく多様な観点の意見を反映させ、エコーチェンバー現象(SNS上でで価値観の似た者が集まった結果、自分が発信した意見と同じような意見が返ってくる現象)化させないように公平性を保とうとしていることがうかがえます。Yahoo!ニュースは、コメント欄の意見に偏りを生じさせない、それでいて言論の自由は守るという目的で編集しているので、恣意性はほとんどないというのが私の見解です」(同)
ネット上の誹謗中傷に対しては、企業のみならず、国も厳しく対処すべきという方針を掲げている。
「国は誹謗中傷を重く受け止めており、SNSやIT大手のプラットフォームに対し、誹謗中傷コメントの削除対応や状況の開示などを迫っています。企業もAIと人的管理で誹謗中傷に対処しており、世界的に見ても似たような対策が進んでいます。総務省では『誹謗中傷への取組の透明性・アカウンタビリティ確保状況について』という資料を発表しており、各企業がどれくらい誹謗中傷について取り組んでいるか、具体的なデータを開示しています」(同)
国も企業も問題解決に向けて積極的な姿勢を見せているが、それでもまだまだ対策を考えていくべきだと高橋氏は力説する。
「誹謗中傷と批判は判別が難しく、具体的な対策がしづらい。人格否定の入るコメントであれば、誹謗中傷に判定されるケースが多いのですが、明確にそうだと断言できないものも少なくないです。また客観的に見れば、まっとうな批判だとみなされるコメントだったとしても、当事者からすれば精神的にストレスのかかる内容であることも。
また有名人の自殺に関してフェイクニュースなど正確ではない情報が出ると、真実とはかけ離れた声が集まり、負の連鎖が続きやすい。ですから、どこまでが許容されるのか、その線引きを考えることは社会全体で考えていくべき問題でしょう。国主導でその線引きを設定してしまうと、言論統制につながる恐れがありますので、やはり業界団体などで力を合わせ、積極的に解決策を導かなくてはいけないと考えられます」(同)
(取材・文=文月/A4studio、協力=高橋暁子/ITジャーナリスト)