楽天モバイル、プラチナバンド獲得でも通信改善効果に疑問…追加で設備費用も

 当然ながら、すでに保有しているプラチナバンドを一部奪われる側の他の大手キャリア3社、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクは反発した。3社は、電波を増幅して届きにくい場所に届けるレピーターの交換や、分割した周波数同士の干渉を防ぐ受信フィルタの基地局への設置を行う必要があるため、移行には10年を要すると主張。一方の楽天モバイルは改正電波法を根拠に、移行に伴う費用について大手3社が負担すべきとも主張。その額は合計3000億円に上るともいわれ、3社の抵抗は強かった。結局、折衝案として700MHz帯周辺にある3MHz幅×2の空きを割り当てる方式が検討され、この方式で楽天モバイルにも新規で割り当てられる見通しとなった。

「楽天モバイルは基地局整備が一巡したことで設備投資費用が今年から大きく減る見通しだったが、プラチナバンドの運用開始に伴い数百億円単位で追加の設備投資費用が発生するとみられる。それゆえに同社はこれまで、移行にかかる費用については大手3社が負担するべきだと執拗に主張してきたわけだが、その出費を補ってあまりがあるほどの効果があるのかは疑問」(大手キャリア関係者)

ローミング費用を減らす効果も期待

 ITジャーナリストの山口健太氏はいう。

「楽天モバイルはKDDIとローミング契約を結ぶことで全国にエリアを確保しつつ、自社で基地局の設置を進めてきました。現在は大手3社に匹敵する人口カバー率99%で『最強』をアピールしているものの、KDDIのプラチナバンドによるところも大きく、楽天が使用する1.7GHz帯ではつながりにくい場所が残っていると考えられます。その楽天が自社でプラチナバンドを獲得できれば広告などでアピールできますし、赤字の原因の1つであるローミング費用を減らす効果も期待できます」

 課題もあるという。

「今回割り当てられる帯域は上り下りがそれぞれ3MHz幅で、通常より狭いものになっています。当面は問題ありませんが、楽天の契約者数が今の2倍くらいの規模になる頃には足りなくなる恐れがあります。また、基地局は既存のものを利用することでコストを抑える方針ですが、1.7GHz帯に最適化された基地局にプラチナバンドを実装したとしても、すぐに効果を実感できるかは未知数の部分があります。

 ソフトバンクは2012年にプラチナバンドを獲得した後も、エリアが狭いというイメージを覆すのに何年もかかりました。同様に、楽天のつながりやすさが劇的に改善したとしても、それが世の中に認められるまで時間を要するかもしれません」

(文=Business Journal編集部、協力=山口健太/ITジャーナリスト)