2023年10月から導入されるインボイス制度はフリーランスや個人事業主にとって悩みの種。手取り収入が減ってしまう人は多いはずだ。
インボイス制度導入後もこれまでの手取り収入を確保したかったら、売上を増やすのが大前提。ただ、それと同時にやるべきなのが「経費を見直すこと」である。事業者が思っているより、経費として認められる出費は多い。これを熟知することで、課税所得を圧縮でき、所得税を抑えられる可能性がある。
『税金でこれ以上損をしない方法 40歳で資産1億円を達成した税理士がやった「手取りを増やす」全テクニック』(永江将典著、翔泳社刊)はフリーランスや個人事業主向けに節税のテクニックを指南。手取り収入を増やすアドバイスをしている。
もっとも手っ取り早いのは、先述のように経費を見直してみること。
経費の定義は「仕事をする上で直接必要なお金」である。それもあって、仕入れにかかったお金やシステム使用料だけが「経費」だと思っている人は案外多い。
ただ、ミュージシャンであれば音楽活動に使う楽器は経費だし、フリーランスのエンジニアであれば仕事で使うパソコンは経費である。もちろん、あれもこれも全部経費にできるわけではないが、経費として認められるものは思ったよりも広く存在する。大切なことはその原則とルールを理解することだ。
フリーランスや個人事業主の場合、オフィスを借りず自宅で仕事をしている人は多いはず。この場合、家賃の一定割合を経費とすることができるが、ここにはルールが存在する。
確定申告を「青色申告」で行う場合、自宅の中でオフィスとして使っている部分の割合に応じて、家賃を経費として計上できる。普段自宅の一室でデスクワークをするフリーランスが3部屋ある自宅の家賃すべてを経費にすることはできない。
ただ、こんなユニークな例もある。
Amazonやメルカリで物販をしているある人物が家賃の95%を経費として計上したところ、「自宅の95%をオフィスとして使っているはずがない」といぶかしんだ税務署が調査に訪れたそう。しかし、家に入ってみると部屋だけでなく押し入れやキッチン、トイレまで在庫の段ボールが山積みになっており、本人が寝る場所はタタミ一畳分。確かに自宅の95%をオフィスとして使っている、ということで経費計上が認められたという。
一方「白色申告」の場合は、家賃を経費計上するハードルが少しばかり高い。「家の50%超」を仕事で使用していなければ、そもそも家賃を経費計上できないのである。
また「接待交際費」も、フリーランスの間ではある意味「経費の切り札」として使われることが多いのだが、当然ながらこれも一定のルールと節度が必要だ。
接待交際費として認められるのは「ビジネス関連の人との飲み会やプレゼントなど」。仕事と関係のない飲み会なのに領収書をもらって後で経費として申請したり、ひどい場合は自分が参加していない飲み会の領収書を友人からもらって経費計上するフリーランスもいるが、これはアウトである。
また、金額についても注意が必要だ。年間の受注額が10万円のクライアントなのに、100万円のプレゼントをして経費計上したら、税務署は「これはおかしい」となる。逆に年間3000万円の受注があるクライアントであれば100万円のプレゼントをしても不自然ではなく、経費として認められる可能性はある。
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ここでは、経費として認められうるものとそうでないものの事例を取り上げたが、経費にはすぐに認められるものや完全にアウトなものだけでなく「グレーなもの」もある。過度に税務署を恐れることなく、まずは思った通りに経費を入れてみること、そして「それが売上を作るために直接的に必要だった」という証拠とロジックを用意しておくことが大切だ。
もしそれで税務調査が入ったら、その証拠を見せ、ロジックを説明すればいい。認められなかったとしても、それは経費かどうかの判断を間違えただけで、決して脱税ではないし、税務署員に怒られることもない。確定申告を修正して、追加の税金を払えばいいだけの話である。
もしかしたら、フリーランスや個人事業主の中には、経費として計上できるのにしなかったおかげで、所得税や住民税を多く支払っている人がいるかも知れない。税金の支払いは国民の義務だが、払わなくていい税金を支払ってしまうのはもったいない。本書は正しい税の知識を授けてくれるとともに、自分の会計処理、税務処理が正当なものかどうかの答え合わせにも役立ってくれるはずだ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。