大阪府はIR開業に伴う経済波及効果を年約1兆1400億円、雇用創出効果を約9.3万人と見込んでいるが、その一方で「負の効果」として懸念されているのが、カジノ目当ての外国人観光客増加に伴う大阪市内の治安悪化や依存症患者の増加だ。その依存症をめぐって、前述のとおり海外のカジノ施設を大きく上回る数の電子賭博機が設置されることに、専門家から懸念の声が相次いでいるというのだ。
「大阪IRの延べ床面積は約77万平方メートルで、この数字を聞いてもピンとこないかもしれないが、たとえばシンガポールの大規模IRであるマリーナベイサンズよりも大きい。運営するMGMリゾーツ・インターナショナルは米国ラスベガスに本社を置き、大規模なカジノを多数展開しているが、そのMGMが手掛ける世界最高水準のIRということで、世間の人々が考える以上に大規模なカジノとなる。
その規模に比して導入されるスロットマシンなど遊技マシンの数も増えるということだろうが、街全体が世界的なリゾート地でもあるラスベガスやマカオとは性格を異にする大阪に、カジノ目的でどれだけ海外から富裕層が足を運ぶのかは未知数。同じアジアであればマカオやシンガポールのカジノに行くという富裕層も多いだろう。年間の来場者2000万人、売上5200億円というのはかなり甘い見積もりだという指摘も多く、巨額の資金を投入して巨大な施設をつくったものの閑古鳥が鳴くという悲惨な状態にもなりかねない。そうなれば、おのずと治安悪化や依存症の問題もそれほど大きくはならないかもしれない」
(文=Business Journal編集部)