しかし、短期的な電気料金の値動きで一喜一憂していても、あまり意味がないと森永氏は指摘する。
「『電力会社は儲けすぎでけしからん』という議論は、建設的ではないと思います。大手電力会社の多くは上場している民間企業なのですから、利潤を追求することはなんら悪いことではありません。とはいえ、生活インフラを支えている企業がそれでいいのかという意見もあります。さらにいえば、上場する必要があるのかどうか。上場するということは、外資が入ってきてインフラが海外資本に握られてしまう可能性もあるし、粗利を人件費や設備投資にまわさずに配当にまわすよう求められるかもしれないこのあたりの議論を、もう一度しっかりしたほうがいいと僕は思います」(同)
さらに日本の電気料金の高騰に関しては、重要なファクターがある。
「原発の再稼働問題ですね。電気料金だけをみれば、原発を稼働させたほうがコストは下がるので、値下げも現実化してきます。ただ、原発というのは、そういった損得を超えた部分での問題や、反対派の声もすごく大きい。日本は発電方式に関して火力、水力、原子力、そして再生産エネルギーも含めたベストミックスを推進しています。現在の電気料金高騰をきっかけに、原発再稼働についても現実論で考えていくべきではないでしょうか」(同)
電気料金が値上げされ、その利益で電力会社が大幅黒字、という単純に思える図式にも、日本のエネルギー政策のひずみや、さまざまな産業の影響が絡みあっている。消費者も、電気料金の請求書を吟味しつつ、より大きな視点で考えていく必要がありそうだ。
(文=清談社、協力=森永康平/経済アナリスト)