スーパーなど、安価を売りにするチェーンの「おにぎり」のなかには、いまも塩水炊飯しているものもあるが、それらと比べるとセブンなど大手コンビニの「おにぎり」は確かに一線を画すクオリティとなっている。
「大手コンビニが『おにぎり』や米飯に注ぐ技術と情熱はみなさんの想像以上だと思います。お米というのはデリケートな食材で、同じ種類でも、地域や収穫時期、さらに保存や精米によって味も扱い方も変わってくる。そんなさまざまな原料米を、熟練の担当者が美味しく、さらに均一な食味になるようにブレンドします。このブレンド比率も、おにぎり、お弁当、寿司とすべて配分が違う。こうしたノウハウは会社でも一部の人間しか知りません。さらに製造工場でも、吸水させる時間、水の種類、ベルトコンベア式炊飯器の火加減やスピードなどを毎日微調整している。こうした作業を担当する米飯の責任者は重要なポジションで、技術と経験のあるベテランしか携われません」(同)
コンビニにとって「おにぎり」は、売り上げという意味での看板商品だが、その原材料の調達から生産、流通、販売に至るまで、各社がこれまで積み上げてきた無数のノウハウが結晶した「代表作」ともいえる。そんなコンビニおにぎりの目下のライバルは、「専門店のおにぎり」かもしれない。近年では手作りおにぎり専門店が増えており、駅チカやショッピングモールなどにも進出。都内では、行列の絶えない人気店「ぼんご」や、その系列店も続々と増えており、大きな話題を集めている。
「炊きたてのお米をお客さんの前で握って提供するというおにぎりの美味しさに、コンビニは太刀打ちできません。しかし、それに近いレベルの商品を全国チェーンで大量販売するというのがコンビニのビジネスなのです。人気専門店の味の傾向などは、コンビニ各社もマーケティングしていると思いますので、今後販売されるリニューアル商品に反映されていくでしょう」(同)
コンビニ技術の結晶である「おにぎり」。ひとつひとつは手軽で安価だが、そこには莫大な開発コストと蓄積された職人的ノウハウも握り込まれているのだ。
(文=清談社、協力=信田洋二/Believe-UP代表取締役)