ヤフー、韓国ネイバーに利用者データを提供、コピー可能な状態…LINE合併問題

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サイト「Yahoo! JAPAN」より

 大手ポータルサイト「Yahoo! JAPAN(ヤフー)」を運営するヤフーが、利用者のデータを韓国ネイバーに提供していたことがわかった。総務省は30日、ヤフーが利用者への周知が不十分なままデータをネイバーに提供していたとして行政指導したと発表した。日本を代表する大手インターネット企業であるヤフーが、なぜこのような問題を起こしたのか。また、ネイバーに提供されたのはどのようなデータであり、利用者はどのような不利益を被る可能性があるのか。専門家に聞いた。

 ヤフーは5月18日から7月26日にかけて、検索エンジン技術の開発・検証のため、ネイバーに利用者の検索関連データを提供。提供されたのは約410万件の位置情報を含む約756万件のユニークブラウザ分のデータであり、ネイバーは当該データを物理的にコピー可能な状態だった。

 これを受け総務省はヤフーに対し、

・データ提供に関して利用者が事前に十分に理解できるよう適切な方法で周知すること
・利用者の利益の保護にかかわるガバナンスのあり方を見直すこと
・ユーザーが情報提供を拒否できる仕組みを検討すること
・ネイバーが情報をコピーできないようにすること
・社内に安全管理措置の実施状況を監査する体制をつくること

などを求めている。

 ヤフーは現在、Zホールディングス(HD)の傘下だが、10月1日付で同じくZHD傘下のLINE、そしてZHDと合併し、3社は一つになって「LINEヤフー」となる予定。合併に伴い、ヤフーが検索エンジン技術をグーグル関連企業から提供されているものから、新会社の大株主となるネイバーのものに変更することを検討中だと一部で報じられていた。

「すでにヤフーは検索エンジン変更を検証するためのテストを行っており、ネイバーへのデータ提供はそのなかで行われたとみられている。LINEは過去、事実上の親会社であったネイバーの韓国社内のサーバに、『トーク』の利用者データを大量に保管していたことが問題視されたこともあり、国はヤフーの検索エンジンが韓国企業のものになることで情報管理上の問題が生じないかを懸念しているとされる。今回、国があえて合併直前という微妙なタイミングでヤフーへの行政指導を実施・発表したことに、さまざまな憶測が流れている。ヤフーもいろいろと『やりにくく』なる面はあるだろう」(大手IT企業関係者)

総務省、強い姿勢の背景

 ITジャーナリストの三上洋氏は「行政指導の文面からは、総務省がかなり細かい部分まで調査したうえで指導を行っている様子が伝わってきて、同省の強い姿勢を感じる」という。

「背景には、2021年に発覚したLINEの情報管理不備問題がある。ユーザーの個人情報が中国の業務委託先企業からアクセスできる状態になっており、さらに『トーク』上のデータが韓国のサーバ内に保管されていたことなどが発覚。日本政府・自治体がコロナ関連対策でLINEを積極的に利用していたことから、LINEは徹底調査と再発防止策の策定に追われた。それから2年しかたっていないのに、今度は日本の利用者のデータが当人に十分に周知されないままネイバーに渡され、しかもネイバー側でデータをコピーできる状態だったということで、総務省が『LINEとヤフーは一体になるにもかかわらず、何も変わっていないのではないか』ということで憤りを抱くのは無理もない」(三上氏)

 ヤフーは大手ネット企業であり、利用者データの扱いについては適切かつ慎重に行っているはずだが、なぜ総務省から指導を受けるような事態を起こしたのだろうか。

「LINEとの合併に伴い、ヤフーはサイトの検索エンジンを事実上のグループパートナーとなるネイバーのものに変えることを検討しており、そのバケットテスト中にネイバー側にデータが渡ったものとみられる。今回のデータ提供は同じグループ内でのやりとりといえ、ヤフーのプライバシーポリシーには抵触していないとみられるが、ネイバー側でデータをコピーできる状態ということは、やろうと思えばネイバーがそのデータを自社のビジネスに活用することが可能となる。それによって利用者、ひいては日本が被る不利益は未知数だ。

 今回の件についてヤフーはお詫びの文書の中で『試験運用に際しては、プライバシーポリシーの範囲内で行ってまいりました』と述べている。だとするとネイバー側でコピーできる状態がプライバシーポリシーに則っていたことになるわけで、プライバシーポリシー自体の信用が失われていると言わざるを得ない。そういう点も総務省が今回強い姿勢を見せている背景にあるかもしれない。

 ネイバーは新生LINEヤフーの大株主となり、その意味でLINEヤフーは純粋な日本企業ではない。我々ユーザーも今後、LINEヤフーのサービスを利用する際には、同社が多国籍企業であるという認識を持つことが重要だろう」(三上氏)

(文=Business Journal編集部、協力=三上洋/ITジャーナリスト)