人生100年時代の中間地点である50代は、難しい年代だ。
仕事の責任は増えて、大きな仕事を手掛けるようになり、家庭生活では子育ての大事な時期。そして親の介護も始まる。
そして自分の体にも変化が起こりやすい。体力の衰えを感じたり、太りやすくなったりする。その意味で、50代は実は変化が大きく、舵取りの難しい人生の分水嶺なのかもしれない。
50代以降も人生を充実させ、楽しめる「咲く人」と、老いの進むまま坂道を転げ落ちるように衰えていく「枯れる人」。どんな人生であっても尊いが、できれば枯れたくはない、と考えているなら知っておくべきことがある。
『50代から実る人、枯れる人』(松尾一也著、ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)はこんなテーマで「枯れる人」と「咲く人」の違いと、枯れないための考え方や行動様式を紹介していく。
50代ともなると、がんばってきた人はそれなりの地位について、影響力を持っている。向上心がある人は「もっとやりたいことがある」「もっと上に行ける」と思っているはず。しかしこの年代は役職定年を迎えたり、別会社へ転籍になったり、給与が減らされたりといったことも出てくる。これまでがんばってきた人ほど、こうした憂き目にあうとショックを受け、絶望感を抱く。
挫折は向上心があるからこそ。しかし、その耐性はつけておいた方がいい。
周囲から必要とされている人、仲間だと認められている人は、何歳になっても枯れることはない。周りに年少者の方が多くなってくる50代は、人間関係を見直す時期だ。
歳をとると表情が乏しくなっていく、とはよく言われることだが、職場で年長者がむすっとしていると周りが委縮する。だからこそ、自分から明るく挨拶したいところ。特に立場ができてくると周囲から挨拶されることになれてしまい、挨拶を「返す専門」になりやすい。
相手が誰であっても自分から明るく軽やかに挨拶する人を嫌がる人などいない。ノーリスクハイリターンである。
若い頃のようにバリバリと仕事量をこなせなくなってくるのが50代。能力的にもじわじわと衰えを感じるようになってくる。
そうなると「この分野なら」という強みになるものや売りがないと厳しい。50代以降の仕事は誰かの「御用達」になれるかどうかが勝負なのだ。逆にそれさえできれば、細くても長く周りから必要とされることになる。
世の中に厳しい上司、怖い上司はたくさんいる。威厳のある上司には近づきにくいが、それだけで嫌われるわけではない。周囲から煙たがられ、遠ざけられる上司とは、威厳を保つことばかりに熱心で、ポジションパワーを駆使して部下に恐怖を与えるマネジメントをする上司である。
特に今の50代は、苦しみに打ち勝ち、常に力を抜かずに励んだものしか勝ち残れないという価値観がまだ残っている人も多いが、威張らない、圧迫感を与えない、部下からも素直に学ぶ姿勢を持つ、が現代のマネジメントのポイント。厳しさよりも面白さ、明るさ、温かさにシフトすることが50代には求められる。
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仕事でも、人づきあいでも、健康面でも曲がり角を迎える50代。この先も枯れずに生きていくために、本書では具体的なシチュエーションをあげて必要な考え方や、変えた方がいい価値観、注意すべきポイントを紹介していく。
体力、知力の衰えは自覚する年代ではあるが、それがそのまま人生の充実度の低下と結びつくかというと、決してそんなことはない。それは本人次第ということを本書は教えてくれる。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。