また診療科によって、給与が変わることも珍しくない。やや古いデータになるが、2011年に労働政策研究・研究機構が実施した「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によれば、最も稼げる診療科は脳神経外科で年収は約1480万円。次いで産科・婦人科の約1466万円、外科の約1374万円となっている。では、現状でかなり潤っているといえる診療科はどこなのか。
「個人的には放射線科だと思います。放射線科はX線、CT、MRIなどの画像撮影・診断を行ったり、放射線を使用してがん治療を施したりする診療科です。診療科の医師は、X線撮影を歩合制で受け持つことが多く、実際に私の知人でも病院勤務の傍ら、副業で多く稼いでいる医師が存在します。その知人は本業とそのアルバイトで年収4000万円ほどになっていましたね」(同)
このように本業のほかに、医師資格を活かした副業、アルバイトをこなして、収入を上げるケースも珍しくはないそうだ。
「医療法では、病院の管理者において、医師を当直させることが義務づけられています。当直業務とは、一般に、夜間の病棟や救急対応を指しますが、その病院に所属する医師のみならず、外部の医師も、アルバイトとして対応します。主に常勤医に課せられる週1度の休みである『研究日』にアルバイトしに来る方が多いですね。またコロナ禍がひどかった時期には、ワクチン接種アルバイトの募集も盛んに行われていました。もちろん多くの医師は使命感で従事していたと思いますが、極めて時給が高いスポットのバイトもあったようです」(同)
医師の給与額は、その仕事量や命を預かる責任などを考慮すると、妥当な金額といえるのか。
「勤め先や担当科、キャリアなどの理由によりケースバイケースですので、はっきりと申し上げることは難しいですね。ただ、一般に医師の給与は日本人の平均年収よりかなり高い水準ですし、それ相応の報酬はいただけているという認識です。その年代で求められるスキルを身につけていれば、まず食いっぱぐれることはない業界と言えるのではないでしょうか。ただ、そもそも医師という仕事は、患者さんの命を預かる仕事です。精神的に負担を感じてしまい、バーンアウトしてしまう方もいるようです。」(同)
一方、男女間の給与格差は依然として存在するようだ。令和4年度の賃金構造基本統計調査をもとに、医師における男女の年収を割り出してみよう。「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で算出したところ、男性が1514万8100円であるのに対し、女性が1138万3700円と女性のほうが400万円ほど少ない結果となっている。
「出産、子育てなど、女性はライフイベントが多くなってしまうため、退職、休職して職場を離れる割合が高くなりがちです。加えて、何年も現場から離れると、『復帰したけれど、医療の進歩になかなかキャッチアップできない』といった厳しい現実に直面する可能性もあります。残念ながら、専門医の制度などは女性目線で作られているとは言えません。女性医師が、ライフイベントを重ねつつも着実にキャリアを積めるようなプランの策定が急務であり、この問題に業界全体で取り組まなければいけないと私は考えています」(同)
(取材・文=A4studio、協力=尾崎章彦/ときわ会常磐病院医師)