中国ハイセンスが日本発REGZAを買収→テレビ市場シェア1位になった巧妙戦略

 ハイセンスが日本市場で勢力を伸ばした理由はほかにもあるそうだ。

「18年と22年にサッカーワールドカップの公式スポンサーを務めたことで、国内での認知度と信頼感を得た部分が大きいかもしれません。日本市場において『聞いたことのないメーカー』というのは敬遠されがちですが、認知を高めることでこのハードルをクリアした感がありますね。これまで中国の電機メーカーというと『品質的に不安がある』という悪い印象を持つ日本人は多かったですが、ハイセンスはこうした抵抗感を払拭できました。

 あとは、日本の消費者の購買意識が変わってきたことも大きな要因です。今の日本のテレビ市場は、かつてほどの高画質・高機能が求められていません。これまで日本メーカーは高品質を追求してきましたが、技術は行き着くところまで行き着いてしまった感があります。技術の進歩でどのメーカーも一定以上のクオリティは実現しているので、今重要視されているのは安さなのです」(同)

 こうした技術の進歩に引っ張られるかたちで、海外メーカーも一定以上のクオリティを出せるようになってきたという。経済先進国は国民の平均年収が年々上がってきたのに対し、日本は長らく横ばいを続けており、相対的に経済力が低下している。そんな日本国民にはハイエンドで高額なテレビよりも、安くて問題なく見られるテレビが選ばれるようになった。一定以上の高性能とリーズナブルさを兼ね備え、さらにブランド認知力も高めてきたハイセンスが頭一つ抜け出たのは当然だったというわけだ。今後も日本のテレビ市場における海外メーカーの躍進は止まらないのだろうか。

「そう簡単には止まらないでしょうし、そのなかでハイセンスはさらに力を増していく可能性が濃厚です。もともとテレビ離れが進んでいる昨今ですから、高品質を売りにしていた国内メーカーは、まさに土俵際に追い詰められている状況といっていいかもしれません」(同)

 東芝の手から離れ中国メーカーのブランドとなったREGZAが躍進しているという事実に、複雑な心境を抱く方も少なくないかもしれない。

(文=A4studio、安蔵靖志/IT・家電ジャーナリスト)