公開情報が少ないベンチャー企業などに就職を考えている際、その会社がブラックか否かを見極めるには、どうしたらいいのだろうか。少し前、採用の内定をもらえたのにもかかわらず、会社から突如解雇の通告をされてしまったというあるTwitterユーザーの体験談が話題を呼んでいた。賃貸管理会社・A社の代表者がTwitterアカウントで不動産営業担当者を募集しており、自身が出演する動画も投稿していた。しかし、同社から内定を得たという人物が「入社1週間前に内定を取り消され、代表とも連絡が取れなくなった」とツイート。A社代表者はTwitterにて「弊社の内定取り消しの件でお騒がせして申し訳ありません。私の口から説明させていただくのでもうしばらくお待ちください」と謝罪するまでに至ったのだ。内定取り消しを受けた人物は「面接で社員ではなく、業務委託契約だと初めて知らされた」といい、同社のさらなる問題点も露わになった。
この件を受けて、SNS上では「実情が不明な企業に応募するときには、まずその会社の厚生年金の事務所検索をしたほうが賢明だ」といった意見もみられた。というのも、正社員にすれば労働契約法により簡単にクビにできないし、社会保険の加入も必須であることからコストがかかる。しかし、業務委託などの契約にすれば、契約を解除しやすいし、社会保険に入れなければローコストで済むのだという。
会社の厚生年金の事務所検索をするというのは、企業のブラック度を調べるのに有効な方法といえるのだろうか。また、これ以外にも企業の内情を探る方法はあるのか。行政書士・社会保険労務士・FP事務所「きむらオフィス」の代表である木村政美氏に話を聞いた。
「実際に残業や休日出勤が多かったり、福利厚生が少なかったり、ハラスメントが横行していたりするかどうかといった、具体的なブラック度がわかるわけではありませんが、確かに厚生年金の加入数によって、その会社の正社員数を大まかに把握することはできます。
正社員は社会保険への加入が義務付けられており、厚生年金への加入も必要となりますので事務所検索にもヒットします。社会保険はアルバイト・パートも加入できますので、あくまで参考程度ではありますが、業務委託のスタッフは社員ではないため加入できませんので、公式サイト上の従業員数に対してあまりにも加入数が低ければ、A社のようなケースもありえるのかもしれません。
例えばその会社の公式サイト上で従業員数を100人と記載していても、厚生年金の加入者が10人程度しかいなければ、正社員は10人程度しかおらず、残りの9割は社会保険に加入していないアルバイト・パート、もしくは業務委託なのではないかと推察できるわけです。そうなると、求人が出ていても正社員ではない雇用形態からスタートする可能性は十分ありますね。
個人的な印象として、このような採用の傾向は新興のIT企業や不動産営業会社に多いと感じます。業務委託契約=ブラック企業とは限りませんが、社会保険料の負担は安い金額ではなく、労働基準法により正社員にすればクビにしづらくなるので、コスト削減で業務委託など外注化する会社は存在します。そのうえ、業務委託といった契約であるにもかかわらず、社員と同じ時間に出勤させる企業もあり、社員との区別がついていないケースもよく聞きます。正社員並みに働いていたとしても、社員向けの福利厚生や社会保険加入がないということになると、不利な雇用契約になっているともいえますね」(同)