「GAFAM【グーグル、アマゾン、フェイスブック(現メタ)、アップル、マイクロソフト】」と呼ばれるビッグ・テックにリストラの嵐が吹き荒れていることは日本でも広く報道された。グーグルが1万2000人、メタが1万1000人、マイクロソフトが1万1000人、アマゾンは1万8000人を削減。リーマンショック以降の世界経済の成長を支えたこれらの企業の黄金時代は終わりを迎えつつあるのだろうか?
世界に知られるこれらの企業の人員削減の背景には、業績の停滞がある。2000年代後半から現在まで“この世の春”を謳歌してきたこれらの企業の業績が、今低下しつつある。『GAFAM+テスラ 帝国の存亡 ビッグ・テック企業の未来はどうなるのか?』(田中道昭著、翔泳社刊)はそんなビッグ・テックの今を解説し、未来を予見する。
先述の人員削減の背景には業績の低迷がある。GAFAM各社の2022年度の年間売上高はグーグルが前年比112%、アップルが同108%、アマゾンが109%、メタが99%となっている。ただ、2021年の売り上げを見るとグーグルは前年比138%、アップルが133%、アマゾンが121%、メタが137%と大きく売り上げを伸ばしており、それだけに2022年の売上高はビッグ・テックの業績停滞と黄金時代の終わりを強く印象づけるものとなった。
グーグルは検索、アマゾンはネットショッピング、アップルはハードウェア向けアプリやコンテンツ。事業内容は様々だが、これらの企業はいずれも独自のプラットフォームを展開することで巨額の利益を得てきた。
しかし2020年代に入り、メタバースやAIなどの先端技術やサービスの発展によって新たなプラットフォームを作りだす企業も出てきている。彼らの出現による競争激化やスマホアプリの配布や販売への規制強化などによってGAFAMの優位性が崩れ、今後業績が悪化していくのではないか。そんな懸念から株価も下落気味となっている。
しかし、本書は業績の停滞や人員削減といった直近のニュースのみから「ビッグ・テックの終焉」を語るのは早計ではないかと疑問を呈している。業績の停滞でいえば、パソコンやスマホ、オンラインサービスの需要が激増したコロナ禍の期間が「特需」だったのであって、それが終わったからといって、GAFAMの技術力や創造性が失われたわけではない。
グーグルの親会社であるアルファベットのCEOサンダー・ピチャイが認めているように、コロナ禍の需要の急増に対応するために人員を増やし過剰な設備投資を行った結果、大規模な人員削減をせざるを得なくなったと考えると、経営上の不手際の誹りは免れないが、現在の状況は強烈な追い風が去って、通常の状態に戻っただけとも言える。
また、チャットGPTと検索サービスのBingを融合させたマイクロソフトや、メタバースの分野で世界をリードするメタなど、最新技術・サービスで依然ビッグ・テックの存在感は大きい。GAFAMのいずれかがこの分野でイノベーションを起こす可能性もある。少なくとも2022年の売り上げだけで「ビッグ・テックに冬の時代が到来した」と断じるのは早計だろう。
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『GAFAM+テスラ 帝国の存亡』はGAFAMに加え、先進性と技術力でこれらの企業に引けをとらないテスラを加えた6社の現状と戦略、将来の展望を解説していく。全世界にユーザーを抱えるビッグ・テック各社の動向を知ることは、今後の世界を見通すために大いに役立つはず。
彼らが今何を考え、何を仕掛けていこうとしているのか。本書からは表面的なニュースからはわからない真の知見が得られるはずだ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。