数学以外の科目でもセンター試験とは大きな変化が見られたそうだ。
「英語では単語数が6000語にまで増加。まだ共通一次テストの時代だった1988年度の2500語から2.4倍にまで増えましたので、よりいっそう高速で読み取る力が求められるようになりました。リーディング問題は料理本、登山雑誌の引用、テレビ発明者の伝記などとバラバラ。複数資料を比較しながら解く問題も増え、とにかく時間がありません。また設問も内容一致を問うものから事実(fact)か意見(opinion)かを問う問題へと変化し、より難解に。
国語は大量の資料や課題文が課せられ、読解力がないとかなりしんどい難易度になっており、社会、理科では図表・グラフを用いた問題が増え、思考力や推論を問われるようになりました。しかも理科では教科書に記載のないパルスオキシメーターを題材にした問題も出題され、話題となりました」(同)
共通テスト難化の余波を受け、私立の一般入試でも読解力重視の傾向が見られるという。
「英語に関してはこの10年で単語数が500語以上も増加した大学もあります。また数学に関していえば、2000年代に比べて『筋道を立てて説明』する証明問題が増え、答えが正解だったとしても論理飛躍があれば大幅減点を課せられることも。そんな流れのなか、早稲田大学政治経済学部が数学を必須とするなど文系学部でも数学の必須化が進んでいます。
また青山学院大学では、科目横断の総合問題が導入されました。たとえば、日本史ならば『租税』の歴史とまとめて、時代をまたいで租税に関する知識が問われるようになるなど分野を横断し、ひとつのテーマに関する理解度を問われる問題形式となっているのです」(同)
また、国公立大学の2次試験でも読解力重視の傾向が見られ、より知識+思考力を問われる高度な記述式の導入が進められているという。
「今後の国公立大学2次試験は、中学受験の情報発信を行う『首都圏模試センター』の思考コードの区分を当てはめると、うまく傾向を捉えることができるかもしれません。
この思考コードの区分では、知識と暗記さえしていれば解ける『A/知識・理解』、知識に加えて文章力が必要となる『B/応用・倫理』、そして知識、文章力、さらには創造的思考を要する『C/批判・創造』という大まかに3つへと分けられます。
では実際の2次試験の傾向に照らし合わせてみましょう。2010年代まではAとBの問題がほとんどを占めていたのですが、20年代に入るとCの問題が頻繁に出題されるようになりました。Cの場合、知識・文章力だけが問われるのではなく、自分の頭で思考し、まとめた考えを解答することが求められます。したがって、解答の主語は受験生本人となるので、AとBのような問題とはまったく異なり、正解のない解答を作らなければいけません。また自分の考えのみを書くのではなく、しっかりと単元を理解したうえで解答を作る必要があるので、より高い読解力・文章力が要求されるのです」(同)
一方で総合型・学校推薦型選抜も今や簡単には受からない難易度に仕上がっているそうだ。
「20年代以降のトレンドは、熱意・入学意欲に加え、学部に関する基礎知識があるかどうか問われる傾向にあります。22年にベネッセコーポレーション・教育情報センターが全国の大学を対象にした学校推薦型選抜・総合型選抜に関するアンケート調査では、総合型選抜の実施目的について『大学での学びについて意欲の高い生徒(に入学してほしい/以下同)』の割合が91%、『大学での学びについて適性の高い生徒』が72%、『学力以外の視点で資質・能力の高い生徒』が62%となっており、近年の大学入試改革の影響が強く出ているといえるでしょう。