「広告やSNSにより脱毛についての情報が周りにあふれたことで、これまで以上に脱毛を意識するようになったと考えられます。さらに、その影響をうけて脱毛を経験する人が周りにいたとしたら、『自分もしなければならない』と考えるようになってしまうこともあるでしょう。そうして脱毛をすると、さらに周りの人が影響を受けて脱毛をするかもしれません。脱毛ブームの背景にはこのようなことが生じている可能性があります。他の装いにもいえることですが、友人や家族といった周囲の人の影響で脱毛をおこなう人は少なくないと思われます。
気をつけなければいけないのは、脱毛することが正しいこと、となってしまうことです。今後脱毛する人が多数派になり、脱毛があたりまえとなってきた場合に、脱毛をしないことに対してネガティブな評価がおこなわれるようになるのは問題だと考えられます」(鈴木氏)
詐欺まがいの広告や強引な勧誘で客を集める悪質エステが増えている脱毛業界だが、ブームは今後も加速していくのか。
「今後も脱毛ブームが続いていく可能性はあると思います。脱毛も装いの一つであり、自分磨きの楽しみという側面もあると思います。ただし、それがあまりにも『しなければならないもの』となるのも不健全だと思います。脱毛をするかしないか個人が自由に選択できるような社会であることが望ましいと思われます」(鈴木氏)
では、トラブルへの予防策とは。
「低価格をうたった広告を鵜呑みにしないこと、あとは強引に契約を迫られてもきっぱりと断ることが大切です。万が一納得できない契約を結んでしまった場合は、一人で悩まずに消費生活センターなどにお気軽に相談してください」(安井氏)
日本人の価値観に馴染み、近年インターネット広告やSNSを通じて浸透が進んでいる脱毛文化。周囲に流されない自分の意思と、悪質業者に騙されない危機意識をしっかりと持ったうえで、自身も脱毛をするか否かを検討してもらいたい。
(文=A4studio、協力=鈴木公啓/東京未来大学こども心理学部准教授)